Transcription
どうも、ドントテルミ新井です。僕は今、京都にいるんですけど、2019年7月18日に京都市伏見区で京都アニメーション放火殺人事件が起きています。
京都アニメーション放火殺人事件。まあ、略して「京アニ事件」ってよく呼ばれているんですけど、京アニ事件は日本で一番多くの犠牲者を出した殺人事件です。実に36名の方が亡くなって、32名の方が重傷を負っています。
単独犯で30人以上殺害する事件って、歴史的に見てもほとんどなくて、京アニ事件が起きる前までは、このチャンネルでも紹介した津山30人殺しが日本で一番多くの犠牲者を出した殺人事件だったんですけど、津山30人殺しが起きたのは1938年で、京アニ事件が起きたのは2019年なんで、実に80年以上ぶりに起きた大量殺人事件なんですよ。
京アニこと京都アニメーションは、本当に日本を代表するようなアニメスタジオで、いわゆる日本の「萌えアニメ」。「萌えアニメ」という言葉自体も古くて時代遅れな感じがしますけど、いわゆるそういう萌えな、もう可愛い女性キャラクターがたくさん出てきて、深夜に放送されていて、まあ、男子たちがこぞって見ているみたいな、そういうアニメを主に作っているアニメスタジオです。まあ、京アニが作った作品で一番有名なのは『けいおん!』で、『けいおん!』は聞いたことがあるって人も多いと思います。
何を隠そう、僕も高校生の時、『けいおん!』どハマりしてたんですけど、まあ、そんな素晴らしいアニメ作品が作られていた日本を代表するようなアニメスタジオ、京都アニメーションでとんでもなく悲惨な事件が起きてしまったわけです。
犯人は京アニのアニメ制作スタジオ、まあ、「第1スタジオ」って呼ばれるスタジオに侵入して、1階の玄関で持っていたガソリンをばらまいて、まあ、それでライターで火をつけて放火しています。
この時、京アニはNHKからの取材を受ける予定だったので、入り口の鍵を開けていたんですよね。だから犯人はそのまま正面玄関から侵入してきて事件を起こしています。
それで、ガソリンに火をつけるって、まあ、とんでもないことで、ガソリンって気化する、蒸発して気体になって空気中に漂うんですよ。だから、ガソリンを撒いて床に広がったところに火が付くっていう感じじゃなくて、空気中に漂っているガソリンにも一気に火が付く形になるんで、ガソリンを撒いて火をつけると、本当に一瞬で大爆発します。
それで、京アニの第1スタジオは1階から3階を貫くように螺旋階段があって、吹き抜け構造になっていました。なので、爆発で発生した黒い煙が一気に建物中に広がっていって、その螺旋階段を通じて火もどんどん燃え広がっていって、一瞬で建物中が火の海になりました。
当時、71名のスタッフが第1スタジオで仕事をしていたんですけど、1階で2名、2階で11名の方の遺体が発見されて、螺旋階段とは別の、3階から屋上につながる階段で、折り重なるように20名の方が亡くなっていました。屋上に逃げようとした人たちが殺到して、まあ、でも屋上への扉を開けることができなくて、その屋上につながる階段で折り重なるように大勢の方が亡くなってしまったわけです。事件後に病院に搬送された方も3名亡くなっていて、計36名もの何の罪もない尊い命が失われました。
事件が起こった実際の現場は、今はもう完全に更地になってしまっています。京アニのアニメスタジオは別のところに移転して、今、本当に何もないです。京アニが公式に「ここの事件の跡地は訪問しないでください」って発表しているので、近くに行くこともできません。
それで、この京アニ事件の犯人、青葉真司という、まあ、当時41歳の男性だったんですけど、この青葉の生い立ちとか、事件を起こすまでの考えや行動を見ていくと、京アニ事件の本当の闇が見えてきます。まあ、というのも、青葉って、こう、誰よりも京アニのことを愛していて、愛ゆえの犯行だったんですよね。青葉の人生を語る上で、京アニは絶対外せない存在になっています。
犯人、青葉は1978年なので昭和53年に、当時の埼玉県浦和市、現在のさいたま市に生まれます。閑静な住宅街に、父と母、そして兄の5人家族で住んでいて、青葉はアニメオタクの根暗な少年だったのかって思うかもしれないですけど、小学生から中学生になるくらいまでは全くそんなことなくて、むしろ逆で、他の子に比べてかなり身長が高くて体格も良くて、運動が得意で、それで、『北斗の拳』のラオウをもじって、青葉の「葉」で「バオウ」ってあだ名で呼ばれていました。まあ、いわゆるガキ大将みたいな風貌の子だったわけです。
体が大きいので、その体格の良さを生かすように、中学1年生の時には柔道部に入って柔道をすごい頑張っていて、地方の大会で準優勝とか、結構いい成績を残していました。
お父さんがあんまり仕事が続かない人で、まあ、結構貧乏な家ではあったんですけど、まあ、でも、柔道してて腕っぷしが強かったからと言って、青葉がこう不良っぽい子供だったってことは全くなくて、貧乏でゲームとか漫画が買えないから友達に借りて、終わったら普通に返してくれる。どっかの暴力ガキ大将みたいに「お前のものは俺のもの」みたいな、まあ、そんなことはしない。体格はいいんだけど、まあ、普通に貧しい子で、まあ、それに目立ってすごい貧乏な家だったってこともない。青葉みたいな生活レベルの子は普通にたくさんいたっていう。まあ、そういうレベルの貧しい家出身でした。
でも、他の家と違って普通じゃなかったのは、まあ、青葉のお父さんで、お父さんはとにかくやばかった。
青葉が柔道の大会で準優勝した時、その準優勝の盾をもらってきたんですけど、お父さんが「そんなもん燃やしちまえ!」って言って、その準優勝の盾、柔道着に包んで柔道着ごと燃やされているんですよね。息子が大会で活躍したって、父親としては嬉しいはずですけど、なぜかそういう息子に対する八つ当たりみたいなことをすごいしてきます。「八つ当たり」って言ったら、なんだかこう優しい言い方になってしまってるんですけど、強い言葉ではっきり言うと、完全なる虐待です。
青葉が9歳の時に、青葉の母親は父親の暴力に耐えかねて家を出ていってしまって、その暴力の矛先が子供たちに向くんですよ。子供たちは不眠に長時間させられたり、箒とかリコーダーで何発も叩かれたり、寒い冬に裸で外に立たされたりみたいな虐待をいつも受けていました。
まあ、そんな日常だったので、「準優勝の盾なんて柔道着ごと燃やしちまえ」なんて意味不明なこと言われても、もう父親の言うことは絶対というか、反抗してももっとひどく殴られたりするだけなので、諦めて父親の言いなりになって、理不尽なことでも父親の言う通りに何でもしていたと言います。
そんなお父さん、まあ、子供にばっかり理不尽にあたって、まあ、自分はまともに働いてもいないので、家にはお金がなさすぎて、家賃が払えなくて、こう、家を追い出されるような形で青葉の家族は引っ越しをすることになります。まあ、引っ越しに伴って、青葉は学校を転校することになってしまったんですけど、まあ、転校先で周囲に馴染めなくて、それで転校先の学校には柔道部がなかったので、こう、大好きな柔道をすることもできずに、最終的には学校に行かなくなって不登校になってしまいました。このまま暗い青年時代を過ごすのかって思うところですけど、青葉の場合、一回人生が浮上する、一回人生がすごく良くなる時期が来るんですよ。
中学を卒業した後の高校時代は、青葉にとって「花の時代」というか、本人も「すごいいい時期だった」って振り返っています。青葉は定時制の高校に行って、完璧な高校デビューを果たすんですよ。周囲に馴染めなくて不登校になってしまってっていう、そんな面影は少しも感じさせないような振る舞いで、一番前でいつも真面目に授業を受けて、宿題を忘れるとか教科書を忘れるとか、そういうことは一切なく、先生からも「いい子」「優等生」って思われていて、まあ、それでいて明るくて他の生徒からも慕われていたと言います。高校は1日も学校を休まずに、入学から卒業まで皆勤しています。
で、定時制高校って夕方から夜にかけて授業があるんで、日中は働いている子が多い。青葉もがっつりアルバイトをしていて、埼玉県庁の文書課っていうところで働いていました。まあ、文書課って郵便物を仕分ける仕事ですね。トラブルもなく真面目に働いていて、「青葉君は真面目でしっかり仕事をしてくれて助かるよ」って他の職員さんからも言われている。まあ、そんなような良い働きぶりでした。
埼玉県庁の文書課での仕事に加えて、かなりたくさんアルバイトを掛け持ちしていて、物流倉庫での積み込みのバイトだったり、ガソリンスタンドでのバイトだったりとか、色々していて、バイトで月17万円とか稼いでいました。
父親に言われて毎月3万円家に入れていたんですけど、まあ、それでも10数万円は自由に使えるわけで、ギターとかベースとかを買ったり、二輪の免許を取ってこうバイクを買ったり、そんな感じで趣味にも自由にお金を使えて、すごく精神的にも豊かになっていきました。お金もあって、それで学校でも真面目に授業を受けていてって、そのくらい生活が充実してくると、女性と遊ぶ余裕まであったみたいで、女性と二人で映画を見に行ったり、カラオケに行ったりとか、そんなこともしていました。
早起きしてバイトして、夕方から高校に行ってしっかり授業を受けて、休みに女性と遊んでって、まあ、充実の日々ですよね。この時、青葉だけじゃなくて、一家全員すごく調子のいい時期で、青葉の妹もアルバイトをするようになって、お父さんもしばらく無職だったりしたんですけど、タクシー運転手としてちゃんと就職して、結構みんなお金を稼いできて、自由に使えるお金も多くて、まあ、一家としてすごく安定した時期でした。まあ、ただ、またしてもお父さんに問題が起こってしまう。お父さん、タクシー運転手として働いていたわけですけど、交通事故を起こしてしまって、両足を骨折して寝たきりになってしまいます。まあ、いよいよ働きたくても働けないような状況になってしまったわけですけど、なんと、お父さん、その後自殺してしまうんですよね。
このお父さんの自殺が、かなり青葉の人生に大きな影響を与えていて、青葉のお母さんって、さっきも言ったように、父親の暴力に耐えかねて、青葉を残して家を出ていってしまっています。その時に青葉は「母親に見捨てられた」って強く思っていて、まあ、それで、自分たちを残して勝手に自殺してしまった父親にも、やっぱり「見捨てられた」って強く思って、この時に青葉は「誰にも頼らずに一人で生きていくんだ」って強い意思で覚悟をしたと言います。
でも、その覚悟とは裏腹に、まあ、青葉が高校を卒業した後くらいから、青葉の人生はどんどんうまくいかなくなっていきます。高校卒業後、青葉はゲーム音楽を作る仕事に就きたいっていう夢を持って、東京に上京して音楽の専門学校に行っています。でも、音楽の専門学校は1年で退学して、地元の埼玉に帰ってきちゃってます。青葉は通っていた専門学校について「あの学校で学ぶものは一つもない。時間の無駄だった」とか、「先生に質問しても『お前にはまだ早い』とか言われるだけだった」って言ってます。
高校の時の真面目な面影はなくなってしまって、まあ、なんというか、頑張らないのに文句だけは言う嫌な生徒になっちゃってます。
その後、地元埼玉のコンビニでアルバイトを始めて、コンビニのバイトは結構続いて、7年くらいコンビニで働いているんですけど、でも、やっぱり最終的にはうまくいかない。コンビニでは結構真面目に働いていたみたいなんですけど、その真面目さがうまく作用しなかったというか、都合の良すぎるバイト君みたいな感じになっちゃってて、店長がとにかく仕事をしない。新人の育成もしない。本来なら店長がやるべき仕事を全部自分に押し付けられた。「いくらなんでもありえない」と思ったって言って辞めてます。まあ、これあくまで青葉の発言なんで、どこまで信憑性があるか分からないというか、まあ、青葉の働きぶりもあんまり良くなくてとか、まあ、色々事情があるんじゃないのとは思っちゃいますけど、まあ、とにかくコンビニのバイトも辞めてしまって、青葉はついに無職になってしまいます。
働く気力も出なかったので、生活保護の申請をしに市役所の窓口に行ったんですけど、「頑張って働いてください」って言われて追い返されています。もう入ってくるお金がゼロになってしまったわけなので、貯金が底をついて、電気ガス水道が止まってしまって、まあ、公園の水で洗濯して、スーパーの配送車から食品を盗むみたいな日々になったと言います。そして、ついに一線を超えてしまう。コンビニバイトを辞めて1年足らずで、青葉は下着泥棒をして逮捕されています。青葉はこの時28歳でした。
執行猶予付き有罪判決が下されて、要するに刑務所には行かなくて済んだけど、前科はついたっていうような状態ですね。刑務所行きこそ回避したけど、まあ、立派な前科持ちの犯罪者になってしまったわけです。
それで、その後、青葉はいろんなところで働こうとするんですけど、まあ、なかなか仕事が続きませんでした。農業機械の組み立て工場のお仕事を半年で辞めて、自動車工場での仕事は3週間で辞めて、こう、接着剤をプラスチックに混ぜる工場も半年で辞めちゃってます。「自分は3週間はかかると思った仕事を2週間で覚えろって言われたから」とか、「英語の勉強を始めてそっちが大変になったから」とか、なんか「そんなもんみたいな仕事をやる気になれなかっただけ」でしょ、みたいな理由でどの仕事も辞めちゃってます。
前科がついて仕事も続かない。そんな、もう本当に人生のどん底っていう状態の青葉だったんですけど、そんな青葉に、一筋の光がここで差し込みます。彼は『涼宮ハルヒの憂鬱』っていう京都アニメーションが作ったアニメに出会います。通称「ハルヒ」で、これも京アニの代表作です。青葉は「ハルヒ」を見て、「こんなすごいアニメがあるんだ」ってすごく感動したと言います。それで、「ハルヒ」について調べていくうちに、「原作は小説なんだ」と知って、「俺も小説家になりたい」と。彼は「小説を書くことに全力を込めれば、誰とも人と関わらずに自分の力だけで生きていけるのでは」と思ったと言います。京アニに自分が書いた最高のシナリオを送れば、最高になれると思ったとも言っています。
京アニは「京アニ大賞」っていうコンクールを開催していて、小説とかシナリオ、漫画とかが一般募集されていました。まあ、それで、その応募されたシナリオとか小説とか漫画が良ければ、そのまま京アニでアニメ化されるみたいな、そういうコンクールがあったんですよね。青葉はその京アニ大賞を取って、自分の小説をアニメにしたい。「ハルヒ」みたいなすごいアニメ作品をこの世に生み出したいって思ったわけですね。本当にどん底の状態で出会った京アニのアニメをきっかけに、「小説家になるぞ」っていう夢を抱くことができたわけです。まあ、そうと決まれば、「小説をゴリゴリ書いていくぞ」ってなる感じがしますけど、まあ、このあたり、小説家として生きていくんだって決めたあたりから、完全に青葉の生活は壊れ出します。
まず、家の家賃を全く払わなくなってしまって、青葉は当時、家賃3万円くらいのところに住んでいたんですけど、入居の初月からもう1円も払ってなくて、まあ、そのまま3年くらい1円も払わなかった。違約金とか損害金とかを含めて、合計で230万円も家賃の滞納がありました。
それで、住んでいる時の居住態度も最悪で、食器とかが洗われずに長期間放置されて、食べ残しとかが腐っていて、壁にはハンマーで開けたと見られる大きな穴が開いていました。それで、毎日夜中の12時4分に目覚ましが鳴って、鳴り続けるんですよね。そしたらその後、毎晩、こう、長い時は夜中の3時頃まで、とんでもなく大きなスピーカーから重低音が流されていたってことでした。もうこれは近隣住民としてはたまらないっていうか、「なんとかしてくれ」って絶対なりますよね。まあ、それで、青葉が住んでいるアパートの上の階から足音がしたら、青葉は壁を殴りまくるんですよ。もうこれでもうさすがに一言言おうってことで、こう、殴られている壁の向こうの青葉の隣に住んでいた住民の方が、こう、ピンポンってして、「うるさいから壁を叩くのはやめてくれませんか」ってドア越しに言いに行ったら、一旦壁叩きは収まったんですけど、しばらくしたら青葉の部屋の中から「うわーっ」って叫び声がして、また猛烈に壁を叩いたと思ったら、今度は逆に青葉がその隣の家のドアの前に来て、玄関のドアのこう、ガチャガチャ回してきて...
まあ、そうなったら、さすがにもう出て対応するしかないってなって、隣の人がドア開けたら、いきなり胸ぐらを掴んできて、「お前殺すぞ。こっちは余裕ねえんだよ。失うもの何もねえんだよ」って怒鳴ってきたと言います。なんというか、もう完全に錯乱状態になっちゃってるんですよね。
落ち着いて小説を書くみたいな、そんな状態からはほど遠い状態になってしまっていて、まあ、そして、その「失うもの何もねえんだよ」の言葉通りというか、青葉が34歳の時なので、下着泥棒で捕まって有罪になった6年後にコンビニ強盗をしています。コンビニに押し入って金を要求したわけですけど、これで2回目の逮捕をされてしまって、実刑判決を下されて懲役3年6ヶ月、刑務所行きが決まってしまいました。「なんでコンビニ強盗なんてしたんだ」っていう警察の取り調べに対しては、「下着泥棒で一回前科がつくと、もうどうでも良くなった」とか、「強い孤独感があった」とか話していました。
それで、ついに刑務所に行くことになってしまったんですけど、刑務所に行っても「小説で食っていく。京アニに自分の作品をアニメ化させる」っていう夢はまだ持ち続けていて、刑務所での服役を終えた青葉は、いよいよ自身初の小説を書き上げます。小説を書こうと決意してから7年半経って、ようやく長編小説を完成させたんですよ。書き上げるまでに7年半で20回も書き直したっていう青葉の小説は、恋愛あり、青春あり、それでいてSFありの学園の小説ってことで、青葉が自分で言うには「金字塔となる作品」ってことで、自信満々で京アニ大賞に応募したんですけど、あっさり落選してしまっています。
青葉の人生を詰め込んだような、青葉の分身的な作品だったって評されたりしているんですけど、まあ、そんな分身らしいというか、青葉の人生と同じように、やっぱり小説もうまくいかない、箸にも棒にもかからずにあっさりと落選してしまいます。
まあ、そんな自分の書いた小説がいきなり京アニ大賞になんて、なかなかにならないでしょって思うところですけど、でも、青葉としては、この自分の書いた小説が京アニに受け入れられなかったっていうのは、一大事で、青葉は「小説が自分の人生のつっかい棒になっていた」って言ってるんですよ。これどういうことかって言うと、「自分の人生を繋ぎ止めておくものは小説以外に何もない」っていう、そういう状況を指して、まあ、親には頼らず生きていくって決めていて、まあ、それでもう仕事もしてないので、社会的にも立場はないし、社会的な立場を得られそうな兆しもない。まあ、小説だけが唯一の生きる希望だったのに、その小説からも裏切られることになってしまった。といった自分自身の状況を「小説が自分の人生のつっかい棒になっていた」と表現したわけです。なので、京アニ大賞に落選したことで、そんな人生最後のつっかい棒が外れてしまったことになったわけですけど、そうしたら青葉はどうなるかって言うと、ここで青葉はとんでもない思い込みをするようになります。「俺の小説が京アニにパクられた」って思い込むんですよ。自分が京アニ大賞に応募した作品のアイデア、内容とかが、京アニの作った作品に転用されている。京アニに応募したわけなんで、京アニに自分の小説が行き渡ってしまったがために、その小説からアイデアがパクられて京アニが作られているって、そう思い込むようになってしまいました。でも、結論から言うと、京アニは青葉の作品を一切パクってないです。
具体的にどんなところについて青葉が「京アニが俺の作品をパクってる」って主張したかって言うと、京アニの作品、まあ、それこそ最初にも言った『けいおん!』の設定で、『けいおん!』の主人公が「私、留年しちゃいそうだよ」って言ってて、青葉の小説にも留年しそうな主人公が出てくるんですよね。そこについて、「おい、主人公が留年しそうって完全に俺の小説からのパクリだろ」って言ってます。あと、別の作品『Free!』っていう水泳のイケメン男子高校生たちのアニメなんですけど、このアニメの舞台となる学校に垂れ幕がかかってるんですよ。で、青葉の小説の学校にも垂れ幕がかかっていて、「それは俺の小説の設定のパクリだろ」って言ってます。あと、『ツルネ』っていう、これまた男子高校生たちのアニメ。まあ、今度は弓道部の男子高校生たちのアニメがあるんですけど、この『ツルネ』で主人公が合宿中にスーパーで2割引きの惣菜を買うんですよ。で、青葉の小説には主人公が50%引き、まあ、だから半額になった惣菜を買う場面があって、「おい、これはパクリだろ」って言ってます。どれも「うーん」って感じですよね。留年しそうな主人公が出てくる漫画とか小説、アニメ、たくさんあると思いますし、垂れ幕がかかってる学校って、まあ、普通にたくさんありますよね。「〇〇君、東京大学合格」とか、「〇〇さん、祝全国大会出場」とか、まあ、そういう垂れ幕、結構普通に見ますよね。惣菜だって、今日もどこのスーパーでも値引きシールが貼られて半額とか何割引きとか普通になってますよね。それを「俺の考えた設定だ」と言い張るのは、さすがに無理があるし、『けいおん!』って主人公の留年を巡る話ってわけじゃない。この留年の下りって、本当にちょっとしたエピソードで、物語の核になるような重要な設定とかじゃないし、学校に垂れ幕がとか、惣菜の割引がっていうのも、まあ、本当にアイデアってレベルの思いつきじゃないですよね。
まあ、それに、京アニ大賞に応募された青葉の小説、まあ、かなり序盤で落選しているので、まあ、そんな京アニ社内の偉い人とか、シナリオライター的な、こう、アニメの根幹を作るような人たちまで届いてないです。まあ、あと、そもそも本当に京アニが「青葉の作品、すごいぜ。ぜひうちでもこの設定でアニメとか作りたい」ってなったら、普通に青葉をデビューさせればいいですよね。京アニが作品を公募しているわけなんで、京アニとしてはこっそりパクる必要がないというか、まあ、そのまま京アニ作品としてデビューさせられる立場にあるわけなんで、まあ、わざわざパクるわけないですよね。だから、この一連の青葉の「俺の作品が京アニにパクられた」っていうのは、完全に青葉の妄想だってされているわけなんですけど、でも、とにかく「俺の作品がパクられた」って思い込んでしまった青葉は、どうしても許せない。なんとか京アニを制裁したいという思いになります。
「京アニが人の作品をパクっているのをやめさせないといけない。アニメーションというと、小説みたいに一人では完結しない、多くの人が関わっているわけで、その人たちはみんな盗んだ作品を良しとして仕事を進めているってことだ。だからもうスタジオごと潰さないといけない。京アニの人は全員殺さないとダメだ」と考えていたと言います。まあ、それに、事件を起こすことで「パクリは悪だ。パクられた側はこんなに傷つく」ってことを世の中に伝えたいとも思っていたと言っています。なので、まあ、特定の京アニの「この人が許せない」っていう、そういう個人を狙うような犯行だったわけではなくて、京アニという組織自体を恨んで事件を起こそうとしたわけです。
そうと決まれば、青葉は2019年7月15日に新幹線で埼玉から京都に向かいます。事件が起こったのは7月18日なので、まあ、京アニに放火をする3日前、前乗りで京都に向かったわけです。15日の午前9時に、自宅近くのATMで全財産だった5万7000円を引き出して、新幹線に乗車しています。それで、京都に着いたら、まずは京アニを下見して、その後は犯行に使うための道具を購入していっています。具体的には、ガソリンとガソリンを入れるための携行缶。ガソリンって車に給油するって形じゃなくても、ガソリンスタンドで普通に買えるんですけど、携行缶っていうガソリン用の特別な缶を持っていかないと売ってくれないです。そのガソリンを買うための携行缶、まあ、20Lの携行缶を2つ買って、ガソリンは40L購入しています。まあ、これは正直買いすぎというか、まあ、そんな量なくてもガソリンって少量でもとんでもない燃え方をするので、青葉にガソリンに対する知識があんまりなかったから、とにかくたくさん用意したんだろうって考えられています。
そんな大量のガソリンと、まあ、あとはガソリンを撒く時に使うポリバケツと、ガソリンとかポリバケツを運ぶための手押しの台車ですね。そういったものをガソリンスタンドとかホームセンターで買っていっています。ガソリンは「発電機に使うためです」って嘘をついて購入していて、まあ、ホームセンターとかでも怪しまれないように、店員に商品の場所を尋ねたりとかは最小限にしたと言っています。2日間かけて準備をして、その間はホテルに泊まっていたんですけど、まあ、お金が尽きて、事件の前日は公園で野宿。次の日の2019年7月18日午前10時頃、台車を手で押しながら京アニの第1スタジオの近くまでやってきて、そのまますぐに犯行とはせずに、青葉は事件現場付近で一人で考え込むんですよ。
ガソリンとかポリバケツが積まれた台車のそばに座り込んで、13分間考え事をします。何を考えていたかというと、自分の半生を振り返っていたと言います。自分の人生を振り返って、その上で本当に京アニに火をつけるかどうか葛藤していたと言います。13分間考え事をするって、結構長いです。これ僕、実際に13分間時間を測って、スマホとかパソコンとか触らずに考え事だけをしてみたんですけど、思っているよりかなり時間が経つのが遅くて、一つのことについてだったら、まあ、かなりじっくり考えられるような時間です。まあ、そんな13分間で、青葉は考えれば考えるほど「自分の人生はうまくいかなかった。まあ、それに対して京アニは光の階段を登っているように見えた。自分の半生はあまりにも暗かった」と。そんなようなことを考えていたと言います。そして、事件を起こすかどうかについてもじっくりと考えて、こう、何度も「やるべきか、やらないべきか」って考えて、そんな葛藤の末にたどり着いた結論は、まあ、「やっぱり京アニは許せない。ここまで来たらやろう」という結論でした。
こうして青葉は京アニの第1スタジオの玄関でガソリンを撒いてライターで火をつけたわけですけど、そんな風に自分でガソリンを撒いて、手に持ったライターで火をつけてってすると、まあ、当然、火をつけた青葉自身も激しい爆発と火の海に飲まれることになります。青葉は全身の93%に火傷を負って、事件直後の青葉の予想死亡率97.45%と言われていました。ここまで激しい火傷を負ってしまった人は、もう97.45%は助からない。生き残れる確率は3%以下という、そんな容態だったわけです。事件直後はもう人としての原型をとどめていなくて、事件直後に青葉の治療に当たったお医者さんは、「こいつが火をつけた張本人か」とかそういうことは全く頭をよぎらなくて、「この人はさすがにすぐに命を落としてしまうだろうな」としか思わなかったと言います。
ああ、そうか。自分も燃え死ぬつもりで犯行したのかって思うかもしれないですけど、まあ、実はそうではなくて、青葉には「事件を起こして自分もそのまま焼け死ぬ」と思ったとか、そういう何か考えがあったわけじゃなくて、自分が事件後どうなるか、本当に何も考えていなかったと言います。僕、これって本当にすごく怖いなと思ったんですけど、この時の青葉は、もうまさしく「無敵の人」というか、まあ、自分が生きるか死ぬかにすら全く興味がなくて、もうただただ京アニに火をつけることだけを考えて行動していたわけです。
青葉は火傷の治療に強い近畿大学付属病院に入院させられたんですけど、青葉以外の被害者の方ももちろん大勢火傷を負って病院に救急搬送されていて、火傷の治療って、基本的にドナーから提供された皮膚バンクの皮膚を移植する形で治療していくんですけど、あまりにも多くの火傷の患者が一度に運ばれてきたってことで、皮膚バンクが枯渇してしまって、青葉にまでドナーから提供された皮膚が回らなかったんですよ。なので、青葉の火傷の治療にあたっては人工皮膚が使われていて、皮膚バンクの皮膚を使った治療よりもかなり高額な治療費がかかってしまっています。まあ、ざっと見積もって1000万円以上の治療費がかかったと言います。でも、青葉はそんなお金当然持ってないので、どうするかと言うと、国とか自治体の負担になります。要するに、私たちが払った税金で青葉の治療費が賄われたわけですよ。
いや、それって「何なの?これだけの人を殺した殺人犯を救うために1000万円以上税金を使って」って、なんかモヤっとするなんて思っちゃうかもしれないですけど、一番その葛藤、「青葉を治療するのって正しいことなのか」っていう葛藤に悩まされたのは、青葉の治療にあたったお医者さんや看護師さんといった医療従事者の方々です。
青葉の治療に関わった方々は、突然、罪のない人を大勢殺した大犯罪者の命を救うような仕事をすることになってしまったわけで、治療をするにあたって、まあ、「なんでこんな人を救うために一生懸命働いているんだ」とか、そういういろんな葛藤があって、普通の患者さんの治療とはまた違った、苦しさや辛さがすごくあったと思うんですけど、まあ、それでも青葉の治療を担当したお医者さんは「この人を絶対に死に逃げさせてはいけない。犠牲になった命、そして残された遺族の方たちのためにも、この人を生かして話すべきことは話してもらって、罪を確定させてその罪を償わせないといけない。強い言葉になってしまうかもしれないが、彼に後悔をさせたい」って話していて、そういう熱い思いと、「たとえ大犯罪者だったとしても絶対に救う」という強い気持ちで治療に当たったと言います。僕は、このお医者さんの思い、本当にその通りだなって思っていて、まあ、僕個人としては、まあ、絶対的に青葉を生かす治療をしてくれて良かったと、まあ、心から思っています。
お医者さんや看護師さんの懸命な努力のおかげで、結果的に青葉は一命を取り止めて、自分で話せるくらいまで容態が回復したんですけど、もし青葉が事件で死んでしまっていたら、事件を起こすに至った青葉の動機であったり、事件当日の足取りであったり、ここまで詳しくは分かっていなかったわけですよ。実際にこの動画も、青葉が事件後に生きて語った内容を元に作られているところがかなりあって、京アニ事件の真相や事件の詳細に迫るために、青葉には生きていてもらわないといけなかったわけですよ。じゃあ、その手厚い治療を受けて生かされた青葉はというと、意識が戻った時に、看護師さんやお医者さんを見て、「自分と全く縁もゆかりもない人たちが、これだけ自分の治療に関わってくれている」ということが嬉しくて涙を流したと言います。「人にこんなに優しくしてもらったことは今までになかった」って話していて、69名もの死傷者を出して、自分も生死の境をさまよって、ようやく青葉は人の優しさを実感できたわけです。
そんな青葉は、一命を取り止めてから、まあ、反省の言葉を口にするようにはなっていて、事件を起こした時のことを振り返って、「一言で言うと、やけくそ、そういう気持ちだった。怒りが先行していた部分があり、短絡的に考えていた。当時は事件を起こすしかないと思っていましたが、こんなにもたくさんの人が亡くなるとは思っていませんでした。現在はやりすぎたと思っています。あまりにも自分が浅はかだった後悔が山ほど残る事件になったと思います」と話しています。
青葉の治療を担当したお医者さんが言っていた「彼に後悔をさせたい」っていうその言葉が現実になったわけで、必死の治療が報われたように僕は思います。やっぱり、自分が死の淵に立った。実際に自分が死にかけたから、「死ぬ」っていうことが、まあ、どれだけ恐ろしいか分かったんじゃないかなって思います。
じゃあ、そんな感じで一命を取り止めた青葉、この後どうなるかって言うと、もちろん、裁判にかけられます。今、僕の後ろにあるのが、実際にその青葉の裁判が行われた京都地方裁判所です。裁判について考えると、被害者や京アニに一切の落ち度がなくて、まあ、それで合計で36名もの方を殺害しているわけで、まあ、これだけの人を殺したんだったら、もう裁判の余地もないというか、もちろん一番重たい刑、まあ、死刑で終わりじゃないのって思うかもしれないんですけど、そう単純には片付かなくて、まあ、ちゃんと青葉の罪の重さを決めるための争点、まあ、「ここをはっきりさせないと罪の重さは決められないよね」っていう点があって、一言で言うと、青葉に責任能力があったのかどうか。もう少し具体的に言うと、青葉は妄想に支配されて事件を起こしたのか。それとも、妄想に支配されることなく、自分の意思で筋違いの恨みを抱いて事件を起こしたのかっていうところです。
というのも、ここまで動画を見てもらった人には伝わっていると思うんですけど、青葉の考え方って、ちょっと病的ですよね。「俺の小説がパクられた」って、もうそれ妄想の域に入っているというか、思い込みが激しすぎるところがある。他にも青葉はインターネットの掲示板に自分の書いた小説を公開していたんですけど、その掲示板に来た反応コメントを見て、「これは京アニの監督からのコメントに違いない」って思い込んだり、挙げ句の果てに、その京アニの監督、女性監督だったんで、「この監督、俺のことが好きに違いない」って思い込んでしまう。匿名の誰かからコメントが来ただけなのに、まあ、それを「京アニの監督が俺の作品を気にかけている」って思い込んで、挙げ句の果てに「俺に惚れている」って、さすがに妄想がすぎるというか、まあ、正常な判断ができている人間じゃないですよね。まあ、さらにもっとひどい妄想があって、青葉は「俺は闇の人物ナンバー2に常に監視されている」ってずっと言っていました。青葉が言うには、「闇の人物ナンバー2」っていう、闇の世界に生きる全ての黒幕、影の実力者みたいな人がいて、ハリウッドやシリコンバレー、世界中の官僚にも人脈があるような人物で、そんな人物に常に監視されているって言ってました。というのも、その「闇の人物ナンバー2」が日本を経済破綻させる計画を練っていたって青葉が思い込んでいて、それで青葉が当時の経済財政担当大臣にメールを送って、「日本の経済はこんな風にしたらいいですよ」って助言をしたらしいんですよ。その青葉のメールのおかげで日本は経済破綻をしないで済んだから、この一件で「闇の人物ナンバー2」から注目されるようになってしまったんだって言っています。
この「闇の人物ナンバー2」が京アニに指示をして青葉の小説を落選させて、それで京アニに青葉の小説をパクってアニメを作るように指示したんだとかまで言っています。もうちょっと呆れちゃうような話のオンパレードですけど、そんな呆れちゃうような話を堂々としちゃうことがまさしく問題で、「そんな妄想に憑かれた人に責任能力なんてあったの?」っていう、そういう点で裁判が進んでいったわけです。
それで、結果から言うと、裁判では青葉の犯行に妄想の影響はほとんどない。青葉には責任能力があったって断定されています。
そもそも、責任能力ってどういう能力のことを言うかって言うと、まず、善悪を区別できて、まあ、そしてその区別に従って犯行を思いとどまる能力があったかどうかという、まあ、そういう能力のことになります。そこから考えていくと、青葉って犯行前に13分間じっくり座って考え込んでましたよね。まあ、それで事件を起こすか否か、すごい葛藤していたわけですよ。それってつまり、放火が悪いことだって分かっているから、やるかどうか葛藤していたわけですよ。
実際に青葉は裁判中の質問で、「放火をするか悩んだのは自分にも良心のかけらがあったからです」みたいに答えていて、放火は悪いことだって善悪を区別できていて、それでいてやるかどうか葛藤した、つまり犯行を思いとどまるだけの能力があった。そして、それはつまり、青葉に責任能力があったっていう結論が出されています。確かにひどい妄想はあったけど、放火自体が悪いことだっていうのは認識できていたわけなので、その上で放火したのであれば、それは青葉の判断であって、妄想で放火したわけじゃない。なので、この犯行は青葉の妄想によるものじゃなくて、青葉の元々の性格によるものだって結論付けられています。
青葉の「自分の失敗を極端に他人のせいにする。自分は特別だと思い込む」っていう、そういう青葉の元々の性格によるものだって裁判で結論づけられて、死刑判決が出されています。
青葉の火傷の治療にあたったお医者さんが「こんな事件なんで起こしたんだ」って青葉に聞いているんですけど、青葉は「追い詰められていた」って答えています。「誰にも頼られず、誰かの役に立ってとか、そういうのが一切ないから、こう、生きている価値を感じられなかった」とも言っています。それで、お医者さんがまた青葉に「この事件の前に今回治療にあたった看護師とか医者と出会っていたら、同じように事件を起こしたと思う?」って聞いたら、「あなたたちに出会っていたらやっていなかった」って答えてるんですよ。だから、人と人との繋がり、まあ、そういうものが絶たれた時に、人はこういう京アニ事件みたいなとんでもないことをするわけですよ。40年以上歩んできた青葉の人生の中で、どこかに一人でも青葉を支えてくれる人がいたら、こんな事件は起きなかったんじゃないかなと思います。
青葉のような人が生まれてこないような社会を作っていくことが、こういった凄惨な事件を防ぐ第一歩になるわけで、まあ、だからこそ、青葉がどんな人生でどんな人だったのか、しっかりと知って、そんな人が二度と誕生しないように、社会全体の問題として捉えて、この事件を忘れないようにしないといけないと思います。ではまた。