📱

Get Our Mobile App

Take your business learning on the go!

Download on the App StoreGet it on Google Play

【1時間22分拡大SP】ハマーンの「欠損」と本当の願い ~並行世界の2人のハマーン~

セリフと演出から読み解く機動戦士ガンダム解説1:22:16

Transcription

めたナレ ハマーン・カーン。

めたナレ 『機動戦士Zガンダム』、および『機動戦士ガンダムZZ』に登場。賢く、強く、カリスマに満ちた天才指導者。気高く美しい、ニュータイプパイロット。

めたナレ 本当だろうか?

めたナレ 2018年に行われ、174万人が投票した全ガンダム大投票では、総合9位。女性キャラではダントツの1位。続くマリーダ、ラクス、セイラたちに、7位以上の差をつけた。

めたナレ ゲームに登場すればラスボス級の強さ。フィギュアやグッズ人気も高い。近年では男性ファンのみならず、コスプレ界隈など、若い世代の女性からも絶大な支持を得ている。

めたナレ 圧倒的な存在感、凛々しさ。自信と決意に満ちた、威風堂々たる振る舞い。

めたナレ しかし。本当だろうか? ハマーンは、本当に、そんな女性だろうか?

めたナレ ハマーンは、月だ。欠けた月。

めたナレ 三日月の本体は、明るい部分だけではない。光の当たらない、真っ暗な部分も三日月だ。

めたナレ 賢く強いカリスマ。気高く美しい天才。多くのファンは、そんなハマーンの光を称賛する。しかし……。

めたナレ ハマーンの、真の魅力はこの闇にある。愚かで、弱く、カリスマとは程遠い、壊れた心。

めたナレ 大正時代の詩人、萩原朔太郎は、こんな詩を詠んでいる。詩集『月に吠える』序文より。

N 月に吠える犬は 自分の影に恐れて吠える 月は 青白い幽霊のやうな不吉の謎 私は私の陰鬱な影を 月夜の地上に釘づけにしてしまひたい 影が 永久に 私のあとを追つて来ないやうに

めたナレ 不吉で、陰鬱な、しかし不思議と美しい、月の魅力。

めたナレ そして多くのファンは実は、言葉にできないだけで気づいている。この闇こそが、ハマーンの魅力であると。

めたナレ その証拠が……。

N アラサーOLハマーン様 連載5年目・単行本8巻突破!!

ずんだ おもしろいよね。

めたん なぜこの漫画が大ヒットしているか、わかるかしら?

ずんだ おもしろいから。

めたん 強く賢く生きてるようでいて、実は生活に疲れ、愛に飢えている……。アラサーOLとハマーン様の驚くべき共通点にいち早く気づき、スポットライトを当てたからなのよ!

めたん つまりハマーンとは、ムリして生きてる社会人だったの。

ずんだ ハマーン解説、2時間の予定が、3分で終了なのだ。

めたん いいえ。この動画では徹底的に、ハマーンのすべて……。ふだん光の当たらない、三日月の闇の部分を照らし出すわ。

めたん アニメ本編に登場した、実在のハマーン。そして設定資料や富野メモの中にだけ存在した、消された存在……。「並行世界の2人のハマーン」を並べて、真の姿を明るみに出す。

めたん 今のハマーンの性格と野心を作り上げた原因は、ドズルだった。シャアの「母になってくれるかもしれない存在」は、ハマーンだった。そしてZZ世界の「忘れられた女」、ハマーンの悲しみ……。

めたん ハマーンの心の奥底と、ZZという作品のテーマを照らし出す、1時間22分スペシャル!

ずんだ はい。

めたん これであなたもハマーンという不吉な謎、青白い幽霊にとらえられ、月夜の地上に釘づけにされること間違いなしよ。

めたん それではいきましょう。

N はじめに.この動画の注意点

N 注意点その1.ネタバレについて

めたん 本動画ではアニメ本編、劇場版、スピンオフ漫画、その他ハマーンに関するすべてを大々的にネタバレします。

ずんだ はい。

N 注意点その1.資料の取り扱いについて

めたん ハマーンの幼少期やバックグラウンドについて、いくつか有名なスピンオフ作品が出ているわ。たとえばこれ。

N 北爪宏幸『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』 14歳時点のハマーンが登場。うぶで純朴な少女から大人のハマーンへ、成長していく様子が描かれている。

ずんだ ツインテールのはにゃーん様。一部の大きなお友達の間で、絶大な人気のあるキャラなのだ。

めたん 作者がZやZZのキャラデザを担当された北爪宏幸さんということもあり、準公式的な扱いを受けることもある有名スピンオフ作品よ。同様に、

N 虎哉孝征『機動戦士ガンダム MSV-R 宇宙世紀英雄伝説 虹霓のシン・マツナガ』 『C.D.A. 若き彗星の肖像』よりさらに前。一年戦争当時のハマーンが登場する。

N 脚本:海冬レイジ・漫画:葛木ヒヨン『機動戦士ガンダム ヴァルプルギス』 ハマーンの戦死後、ハマーンを名乗る女性がネオ・ジオン残党を率いて現れる。その正体は……!

ずんだ どれもだいぶ有名なスピンオフ作品だよね。

めたん ええ。これらの作品もそれぞれ異なる解釈で、「ハマーンという闇」を解き明かしているわ。

めたん とはいえ、あくまでスピンオフの一つ。今回の動画では、これらの漫画での設定は扱いません。

ずんだ はにゃーん様は出てこないのだ。

めたん 今回の動画では、以下の3つの作品に基づいて分析を進めていきます。

N TVアニメ『機動戦士ガンダム』 TVアニメ『機動戦士Zガンダム』 TVアニメ『機動戦士ガンダムZZ』

ずんだ なるほど、アニメだけね。

めたん あと、それに準ずる重要参考資料として、以下のものを参照しています。

N ・小説版『機動戦士Zガンダム』 ・準備段階の企画書や富野メモなど ・富野監督・榊原良子さんなど関係者インタビュー

ずんだ 1stとかZZの小説は参照しないの。

めたん 1stの小説は、言わばパラレルワールド。ZZはかなり原作準拠だけど、筆者が遠藤明吾さんで富野さんじゃない。なので、ちょっと特殊なのよね。部分的には参考にしてるけどね。

めたん またZZって当時の雑誌やムック本で、どこまで本当かわからない関係者リーク情報がたくさんあるの。

めたん ぜんぶ信じてるとわけわからなくなるので、これらは一つずつ、アリかナシか判断してるわ。

N 注意点その2.それ以外の推論について

めたん 本動画では書籍や資料を引用する場合、必ず出典を明示しています。それ以外の部分はすべて私の個人的な“解釈”です。

めたん 「作者はこう考えてたはずだ」という意図当てゲームや、「本当の意味や理由はこれだ」という正解当てゲームでもありません。ただただ、私の、個人的な解釈です。

めたん ですのでいちいち語尾に、「だと思う」とか「かもしれない」とは書きません。なぜなら、ぜんぶそうだからです。

めたん そして当然、バンダイナムコエンターテインメントやサンライズ、富野由悠季監督とは一切関係がありません。ご了承ください。

ずんだ いつもそうじゃない?

めたん そうよ。でもハマーン様はとりわけ多く愛されてる、息の長いキャラだから。

めたん これはあくまで私のハマーン論。あなたのハマーン論を否定するものではないので、ご注意ね。

ずんだ お互いの面白いところを、シェアし合えたら一番なのだ。

めたん 前置きが長くて、本当にごめんなさいね。でもこういうの言っとかないと、うるせえやつらがくだらねえクレームを……。

ずんだ それじゃあさっそく、本編スタートなのだ!

N ポイント1.ハマーンって本当に「いい女」か?

ずんだ やめろ。いきなりハマーンファンにケンカ売るようなこと……。

めたん ハマーンは世間の「いい女」「女傑」というイメージとは逆に、どうにも擁護できない「小悪党」「小物」ムーブがいくつかあるの。たとえばこれ。

N 小悪党ムーブ1.誰とでも同盟する: 第3勢力として登場し、エゥーゴとティターンズ、双方に同盟の提案をちらつかせる。単独での軍事力は決して高くないが「相手側につかれるとまずい」という心理を利用し、両陣営を揺さぶった。

ずんだ そうだった。エゥーゴとティターンズ、両方と順番に同盟結んだりして、だいぶクズムーブだったのだ。

めたん もちろん、戦争は非情なもの。勝つためには何でもやる、というのは当然。でも、あまりにもポリシーがない。

めたん ジオン残党のアクシズが、ジオン残党狩りとスペースノイド弾圧を目的に結成されたティターンズと同盟するというのは無茶苦茶よ。

ずんだ 青酸ガスまいたり鉄砲撃ったり、すぐ裏切るしな。

めたん でもここからハマーンの最終目標が、ザビ家復活やジオンの再興、スペースノイドの権利獲得……、といったものではなさそうだ、ということが透けて見えるわね。

ずんだ もしそうならティターンズとは、一時的にでも協力しづらいよな。

めたん さらに。

N 小悪党ムーブ2.ハッタリとブラフの多用: 当初、大量のガザC集団を率い、ミネバを元首に掲げ、鳴り物入りで登場。……したものの、ガザCは作業用機械を改良した欠陥品。兵士も未熟な少年兵ばかりということがクワトロに見抜かれている。

ずんだ ガザCと言えば、作業用の機体だったガザAの改修機だね。変形機のくせに2~3回変形するとフレームがおシャカになる、文字通りの欠陥機だったのだ。

めたん 無理に変形させなくてもいいのにね。

ずんだ おまけにMA形態だと航続距離が短すぎて、すぐエネルギー切れになる。そのくせMS形態だと機動性が低すぎて、白兵戦ができない……という、まさに帯に短しタスキに長しの、デコボコMSだったのだ。

めたん その通り。ただし、ハマーンにとってはそれでもよかった。そこは、さすが策士ハマーン。

めたん これだとさ。すごい、脅威な感じ、するでしょ?

ずんだ まだ誰もガザCの性能を知らないからね。なんかすごいの来たって感じするね。

めたん じゃあ、これなら?

ずんだ 勝てそう。

めたん そうよね。ザクとかドムとか、見たことある機体じゃ威圧にならないわ。ポンコツでも変形機構を備え、実力は未知数の新型機がずらりと並ぶ。「新たな脅威」を見せつける、完璧な演出だったわ。

めたん 他にも旗艦グワダンの謁見の間には豪華な装飾を施してあり、実は少年兵ばっかりだけど、大量の兵士がずらりと並ぶ。ミネバを中心とした巨大勢力と見せかけ、自らも自信満々で登場。

めたん この「見せかけ力」もハマーンの特徴よ。セルフプロデュースと演出力が異常に高い。脅しやハッタリの手腕が圧倒的で、連邦を何度も手玉に取ってる。

めたん これらは彼女の「小悪党さ」を示すと同時に、「天才性」を示すエピソードでもあるわね。さて、次からいよいよ悪人度がぐっと上がるわ。

N 小悪党ムーブ3.ダブリンへのコロニー落とし: 連邦にネオ・ジオンの脅威を見せつけるため、ダブリンへのコロニー落としを敢行。民間人を中心に多大な被害をもたらす。

めたん ハマーン最大の汚点はここよ。戦争を有利に進めるために、市街地のど真ん中へコロニー落としをした。そして民間人を虐殺した。

めたん 以前から言ってるけれど、私アメリカの原爆投下だけは許してないわ。あれは史上最大の戦争犯罪。民間人を大量虐殺した絶対悪だって、何百年でも言うべきなのよ。

ずんだ でもダブリンのコロニー落としは、被害は大きくなかったんだよね。一説によれば、あくまで目的は恫喝だったから、あえて逆噴射のブースターを取り付けて勢いを減らしたという説も。

めたん そんなアホなこと言う人は、強化人間手術してしまいなさい。

ずんだ ダメだよ。急に倫理観バグらせるなよ。

めたん 広島の原爆の被害者が、公称約14万人だけどね。1万人なら被害が少ないって言える?100人なら大したことない?そんなわけない。問題は、あくまで民間人を狙ったこと。

めたん しかもこのときはラカンたちに命じて、人々が逃げられないように橋や道路を破壊させている。恫喝じゃない。「多く殺す」ことを目的にしているわ。

ずんだ 逃げたくても橋とか道が壊れてるのは、だいぶ怖いのだ。

めたん あとね、物理の得意な人はちょっと計算してみて。全長30kmの鉄の塊が成層圏から自由落下してくるとき、どれだけの逆噴射をかければ勢いを減らすことができるかしら?

ずんだ えーと……。すごく大変そうなことはわかるぞ。

めたん 止まってる宇宙船を打ち上げるだけでも大変なのに、落ちてくるコロニーを減速するような逆噴射ブースター。私の計算ではスペースシャトル打ち上げ100万機分は必要と出たわ。

ずんだ とんでもない数なのだ。

めたん ガンダムシリーズの敵は、必ず一度は残虐な大量虐殺をする。1stでのギレンのコロニー落とし、キシリアの基地爆破、Zでの30バンチ事件や、コロニーへのG3ガス作戦。

めたん これらは富野監督の思想と深く関係があるんだけど、それについては以前の特集『富野由悠季の仮面』を見てほしいわ。とにかく……。

めたん この、民間人の大虐殺。しかも目的は連邦との交渉を有利に進めるためだけ。この行為が、ハマーンの株を大いに下げていると言える。

めたん さらに!

N 小悪党ムーブ4.マシュマーへの非人道的扱い: 自らを慕っていたマシュマー・セロに対し、強化人間手術を敢行。その忠誠心を利用しつつ、死に際しても冷淡な様子だった。

めたん 強化人間手術はガンダム世界では最大のタブー、最低行為の一つ。フォウ、ロザミア、プル……。みんな悲劇の末路を辿っている。強化されたマシュマーを使い捨てたハマーンは、タブーを犯した。

ずんだ 確かに、フォウとかプルとかかわいいおにゃのこだと「ひでえことしやがる」って思うけど、なんかマシュマーさんだと「まぁいいか」って思っちゃうのだ。

めたん 思っちゃダメよ。マシュマーも生きてんのよ。

ずんだ 本当なのだ。

めたん そして死の知らせを聞いたときの対応。これがあまりにも冷淡だった。

N 「強化しすぎたか……。これで、意のままに動かせる持ち駒を一つ失ったな」

ずんだ ひでえ。

めたん これは、マシュマーが命を投げ出す覚悟でいたことを知っていたので、あえて冷淡に言った、言わば賛辞の一つ……と、とれなくもない。ただ普通にとると、利用したと見るのが自然ね。

ずんだ マシュマーがハマーン大好きだったの、みんな知ってるから、利用されたように見えるよね。

めたん そうね。そんで、これまでの小悪党ムーブ1から4、ある共通点があるのよ。見てみましょう。

N 1.誰とでも同盟し、 2.ハッタリとブラフで揺さぶり、 3.民間人の虐殺や、 4.自分を慕うマシュマーさえ利用する

めたん キーワードは「利用」。ハマーンは抜群の政治力・交渉力・演出力を持っている。それは裏を返すと、人を利用して、自らの野心に役立てているの。

めたん そうしてうまく、小ずるく立ち回って、獲物だけかすめ取る……。そんなハマーンの振る舞いを、富野監督はバッサリこう切り捨てている。『機動戦士Zガンダム大辞典』より。

N 富野 彼女はね、強い男に憧れていたわけです。でも彼女には強い男、というものが、どのような存在であるか、を理解することができなかった。だからでしょうね、あのような女になってしまったのは……。後からやってきて、魚夫の利を得ようとズルく動き回ろうとするなどというのは、結局のところ小悪党でしかないんです。強い男というのを理解できなかった、いや知らなかったのでしょう。

ずんだ 漁夫の利、ってのは、アレだよね。人と人が争ってるところをウロウロして、横から何か、拾って帰ろうとするような人のことだよね。

めたん そうね。エゥーゴ、ティターンズ、連邦を知略でかき乱して、その隙に自分の獲物を持ち帰る。まさに漁夫の利。

めたん そして、それ以上に大事なのはこの部分よ。

N ハマーンは、強い男に憧れていた。でも彼女には強い男というものが、どのような存在か理解することができなかった。

めたん その目的の良し悪しは別にして、ギレンやダイクン、シャア、ブレックスやジャミトフは、小ずるいだけじゃなく信念があった。

めたん それが独特のカリスマにも繋がっていくんだけど……。それについては次のポイントで見ていきましょう。

N ポイント2.ハマーンには本当に「カリスマ」があったか?

ずんだ あったんじゃないの?マシュマーとかキャラとかも、だいぶ忠誠心高かったし!

めたん そうね。なかったとは言わないわ。でも「圧倒的」ではなかった。

めたん なぜなら彼女は最後まで、「ミネバの摂政」という立場を利用した。ザビ家やミネバというカードがなければ、決して一人ではトップには立てなかったの。

めたん 後ほども出てくる重要セリフで、こんなのがあるわ。『機動戦士ガンダムZZ』第44話、「エマリー散華」より。

N 「私はミネバ様を、ジオンの血を利用してザビ家を見返したいだけだ!」

めたん さらにその後、ミネバがジュドーに連れ去られそうになると、「お前らに利用されるくらいなら」と言って、ミネバを殺すと脅迫までしている。

N 「お前たちに連れてゆかれるくらいならば殺す。ミネバ様を苦しめたくないからな」

N 「私がミネバ・ザビを利用しているなどという非難は、もう聞けないな。ジュドー!」

ずんだ お互い、ミネバというカードを利用し合っているのだ。

めたん もちろん脅しだし、この頃ミネバはもう影武者にすり替わってるはず。でも自分にミネバというカードがないと勝負ができないということを、ハマーンはよくわかっている。

めたん これは完全にカリスマで国を掌握していたギレンやシャアとは全く別。マシュマーたち軍人を心酔させるくらいのカリスマはあったけど、政治レベルではとても比較にならないわ。

ずんだ シャアはコロニーの人が歌を歌ってくれたり花をくれたり、めちゃくちゃ愛されてたよねえ。

めたん しかもハマーンはミネバがいながら、グレミーの反乱を許した。あんな青二才が「我こそザビ家」とか言い出しただけで、あっという間に軍隊の半分も持っていかれてしまったわけ。

ずんだ なんかもともと、ハマーンとか、待遇とかに、不満があったのかもね。だからあんなにすぐ、みんな反乱に加わった。

めたん そうなの。そしてハマーン自身、自分に国全体を押さえるカリスマがないことを、自覚していたきらいさえあるのよね。

ずんだ と言うと?

めたん まず、第18話「ハマーンの黒い影」にて。グレミー・トトにこんなことを言ってるわ。

N ハマーン「お前が組織しつつあるニュータイプ部隊はどうだ?」 グレミー「ハマーン様。それは口さがない連中のうわさです」

めたん 意訳するとこうよ。「反乱の準備はどうだ?」とハマーンが尋ねた。それをグレミーが「誰がそんな悪い噂を?」とすっとぼけた。

ずんだ だいぶ早くから、グレミーが何か企んでそうだぞって気づいてんだよね。

めたん さらに別れ際にはこうも言ってる。

N グレミー「このグレミー、ハマーン様の御為なら……」 ハマーン「お世辞はいい」

めたん 「ハマーン様の御為」と言ってごまをするグレミーに、「お世辞だというのはわかってるよ」と斬って捨てている。これもう完全に嗅ぎ取っているよね。

ずんだ さすがニュータイプなのだ。でも、それなら殺しちゃえばいいのに。

めたん そこなのよ。謀反の可能性に気づいていながら、グレミーを生かしておいたのはなぜか。

めたん それはきっと、グレミーの利用価値……。ザビ家の血を考えたんじゃないか。だから殺さず、手札に置いておきたかった。

ずんだ こないだもちょっと話題に出たよね。諸説あるけど、ギレンのクローンだとか、デギンの隠し子だとか……。

めたん この話だけで動画一本になるので、今日は深入りしないわ。でもこのグレミーの血は価値がある。ミネバとは違う形で、あるいはバックアップとして使えるでしょう。

ずんだ 予備ってこと?

めたん そうね。さらにプルとプルツーもザビ家の血を引くキャラクター。これもハマーンの切り札だったはずよ。

ずんだ ええええ。でも、アニメでそんな描写、ぜんぜんなかったのだ。

めたん 正確には存在するの。とってもわかりづらいんだけど……。まず第18話「ハマーンの黒い影」にて、プルがジュドーと一緒にモウサの宮殿を訪れる。

めたん このときプルは「捧げ銃」と言って、儀礼上最高級の挨拶を送られてる。普通なら王様とか国家元首クラスの人が受ける敬礼よ。

めたん そして2人はこんな会話もしているの。

N ジュドー「お前ひょっとしてこの宮殿のお姫様か?」 プル「ちょっと違うけどね!」

めたん ねぇずんちゃん。

ずんだ はい、ずんちゃんです。

めたん もしずんちゃんが、皇居でもバッキンガム宮殿でもいいけれど、宮殿みたいなとこの入口に行って、こう尋ねられたらどう答える?

めたん 「ずんちゃんてひょっとして、この宮殿のお姫様なの?」

ずんだ 僕は男の子かもしれないので、ちょっと性別はわからないのだ。

めたん いやね、そうじゃなくて。「あんたここの王族?」って聞かれたら、どう?

ずんだ た、たぶん違うのだ。

めたん たぶん?じゃああんた、枝豆のくせに、1ミリくらいは王族の血を引いてる可能性あるっての?ああん?

ずんだ な、ないです。

めたん そうでしょう。こんなとこで「お姫様か」って聞かれて、ふつうの人は絶対「ちょっと違うけどね」とは答えない。

ずんだ じゃあ、プルはザビ家のお姫様なの?

めたん それもアニメ本編では明言されていないわ。ただし何故かプルたちの乗機には大きくジオンの紋章が描かれている。

めたん またアニメ誌ではハッキリ「ザビ家の血を引く」と書かれたこともある。ザビ家と無関係と考えると、ちょっと苦しいと思うわ。

めたん この通り、明言こそされていないものの、グレミーとプルはザビ家の血を引いている。ハマーンはそれを手元に置いている。

めたん これはハマーンの、以下のセリフと完全に合致するわ。

N 「私はミネバ様を、ジオンの血を利用して ザビ家を見返したいだけだ!」 (44話「エマリー散華」)

N (私の姉はザビ家に尽くし、宇宙の果てで死んでいった。しかし、私は死ぬものか! 新しい血をザビ家に加え、必ずや復活してみせてやる。 ネオ・ザビ・ファミリーを……) (32話「塩の湖を越えて」)

ずんだ ザビ家を利用する、はわかるけど。「新しい血をザビ家に加える」、ってのは、何を言ってるんだろう?

めたん 考えられる可能性は、2つしかないわ。1つは、ミネバに婿をあてがい、自分が裏から糸を引く。昔の日本の摂関政治とか、外戚政治とかがまさにこれね。

めたん もう1つの可能性は、グレミーやプルのこと。ミネバというドズルの血筋のカードで勝負ができなくなったときに、ギレンないしデギンの血筋をデッキに入れたかったのか。

ずんだ カードゲームみたいなのだ。

めたん そう言ってもいいかもしれないわ。手札、切り札、隠し札……。

めたん ハマーン一人のカリスマでは、国も軍隊も掌握できない。そこでミネバを携えていたけれど、それ一枚だけでは足りなくて、実際にグレミーの反乱を招いてしまった。

めたん ハマーン自身の影響力には限りがある。そこでミネバの他に、グレミーやプルという危険な手札も持っていた いざとなったらそれを切り、ネオ・ザビ家を作るつもりだったのかも。

めたん ここまでの要素を踏まえた上で、さっきも一部紹介したハマーンの台詞を見てみましょう。ポイント1と2での、ハマーン論の結論です。それは……。

めたん ハマーンは小悪党。カリスマも十分とは言えない。

ずんだ だいぶ悪意があるのだ。ハマーンファンからの報復が怖いのだ。

めたん でもね、それって、こうも言い換えられると思うのよ。

めたん 実はハマーンは、それほど強くない。だから人に命令し、利用する。ミネバやグレミーを手札に置いている。そんな脆い権力基盤と、心が見える。

めたん そしてそれは、こうも言えるわ。ちょっとロマンチックだけど……。本当は、そばにいてくれる誰かを求めていた。

ずんだ そばにいてくれる誰か。誰だろう? 赤いノースリーブの人しか思いつかないのだ。あれ、でも、赤いジャケットの人にもそんなこと言ってたような……。

めたん さぁ、いよいよハマーンの内面世界に深く踏み込んでいきましょう。ここから時系列順に、実在のハマーンと並行世界のハマーン、順番に見ていくわ。まずはここから!

N ポイント3.歴史1 一年戦争時代

めたん 一年戦争当時、ハマーンはまだ12歳。一体何をしていたか、書かれている公式資料はないわ。

ずんだ さっきの漫画スピンオフでは、この頃もうフラナガン機関でNT検査を受けていて、身体をいじり回されるのが嫌だった……、って設定だよね。

めたん それも面白い設定よね。個人的には別の説を推したいわ。

ずんだ というと。

めたん 小説版『ガンダム』の設定では、フラナガン機関の設立は0079年6月。MS戦の中、一部のパイロットの反応速度が異常で、よけられるはずのないビームをよけたことで研究がはじまった。

ずんだ たぶんシャアのことだな。

めたん ハマーンも6月以降、フラナガン機関に出入りしてた可能性はある。でももし大きくニュータイプ能力を開花していたら、ブラウ・ブロもエルメスも彼女に渡ってたんじゃないかしら。

ずんだ ララァの発見はシャアの左遷後で、シャリアは木星帰りで……。どちらも10月頃に発見されてるはずなのだ。

めたん 素質が見出されてた可能性はあるけれど、この時点でララァ以上だったとは思えない。

めたん そして、ハマーンにとって最も重要なこのセリフ。『機動戦士ガンダムZZ』第32話でのモノローグを思い出してみましょう。

N (私の姉はザビ家に尽くし、宇宙の果てで死んでいった。しかし、私は死ぬものか!)

ずんだ ハマーンの姉は、ザビ家に尽くし、宇宙の果てで死んだ……。どういうことだろう?

めたん いろんな解釈ができるわね。小説版Zによると、ハマーンの姉マレーネは、ドズルの愛妾……。つまりお妾さんだったと書かれている。

ずんだ 妾!愛人のことなのだ。

めたん 妾と言ってもドズルは王族だから、側室と言った方がいい。ザビ家は当時、男三兄弟、ギレン・ドズル・ガルマと、誰も子供がいないかった。側室を置くのは当然出てくる発想よね。

ずんだ 宇宙世紀はだいぶ人権意識低そうだしな。

めたん あとね、私、となると……。ドズルのこのセリフがどうしても頭をよぎるのよね。『機動戦士ガンダム』第35話「ソロモン攻略戦」より。

N 「このソロモンが落ちるものか。万一だ、万一のことを考えてのことよ。ようやくにも手に入れたミネバのため」

めたん 「ようやくにも手に入れたミネバのため」。結婚はしたが、長いこと子宝には恵まれなかったことがうかがえる。

ずんだ えっ。まさかそれで、ハマーンの姉ちゃん……。マレーネ・カーンを側室に?

めたん 仮説だけどね。ある漫画では、デギンが側室をあてがったという設定にしている。もちろんドズルが自分の意思で置いた可能性もある。世継ぎを産むためのバックアップ、あるいはただのお楽しみとして。

ずんだ かわいそうなのだ。

めたん 『キングダム』とか読みなさい。これの百倍くらいひどいから。

ずんだ はい。

めたん しかし正妻であるゼナが、子供を授かった。これによりドズルの気持ちは一気にゼナと子供に傾く。側室マレーネ・カーンへの寵愛は、一気に減じたはずよ。

ずんだ ど、どうなっちゃうの。こういうとき。捨てられちゃうの?

めたん 何を言いますか。これからお姫様が生まれてくるのよ。やることがあるじゃない。

ずんだ なあに?

めたん 出産するゼナと、生まれてくるミネバのお世話係よ。初産は大変だからね。

ずんだ じ、自分を捨てた男と、別の女の間に生まれた子供のお世話……。王宮の人は大変なのだ。

めたん 『機動戦士ガンダム』第35話「ソロモン攻略戦」。このとき映る、ゼナをとりまく侍女や女官たち。この中に、マレーネ・カーンがいた可能性があるわ。

ずんだ ハマーンの姉ちゃんが、ソロモン戦に参加していた。正妻と側室が一緒にいるなんてこと、あるの?

めたん 日本でも西洋でも、後宮や大奥では、女同士で火花バッチバチのこともあれば、割と仲良くやってたパターンもある。

めたん マレーネは記録上、ゼナやミネバを世話しつつ、アステロイド・ベルトまで行ってる。どこか途中で合流した、というのは不自然だから、ここにいたのよ。

ずんだ この中にハマーンの姉ちゃんがいたのは考えたこともなかったのだ。それでハマーンも、「姉はザビ家に尽くし、宇宙の果てで死んだ」なんて言ってるのか。

めたん そうね。マレーネはドズルの側室であり、寵愛を受けていたが、ゼナがミネバを身ごもったことで愛を失い、孤独に死んだ。

ずんだ かわいそう。それでハマーンは、ザビ家に複雑な感情を抱くことになるのだ。

めたん それどころか、これは私の妄想だけど……。側室マレーネが先に身籠っていたのに、正妻ゼナがミネバを授かり、堕胎を強要された……くらいのことはあると思っているわ。

ずんだ ま、まさかなのだ。あの優しいドズル兄さんが、そんなことするわけないのだ。

めたん それは現代の価値観よ。王家の血筋を絶やさないため、側室にスペアで王子を生ませるのは当然。そんで正妻に世継ぎができたら殺すなんてのは世界中でやってるわ。

ずんだ ザビ家って、そういや公王制だから、血筋がすべてだったのだ。

めたん まぁそれは行き過ぎた妄想だとしても。ハマーンは、大好きだった姉マレーネと、ドズルの関係を見てこう思った。

めたん 「私の姉は、ザビ家に尽くし、宇宙の果てで死んだ」。だいぶさびしい、そして強い恨みを感じるセリフよね。こうまで言わせるのは、一体何があったのか。

めたん 仮に、「赤ちゃんのお世話をしていて、身体を壊して死んだ」……。それだけだとしたら、こんな強いセリフになるかしら?かなり深い憎しみや怨念が籠っているように思える。

ずんだ 何があったかはわからないけど、ドズルに捨てられた、それを恨んでるってこと?

めたん そうね。でももともと側室の身分でしょう?ミネバができて捨てられた……、ってだけじゃ、だいぶ弱い。堕胎じゃなくても、ハマーンがドズルを深く憎悪する何かがあった。

めたん それを裏書きする、もう一つのとんでもない資料があるわ。資料収集家のアリシアさんからお借りした、1987年月号のB-CLUBの記事。

めたん 少し長い記事なので、一部抜粋してお届けするわ。それはこれ。

N ざっと最終回のストーリーを紹介したが、いくらかの謎が残る。そのいずれも本編の中では明らかにされないようだ。これは富野監督の“トミノメモ”によればすべて設定されていた。どのような事情で本編に描かれなかったのかは謎だが、ここでその謎について解明しておこう。

N まずハマーンの正体であるが、彼女はザビ家の三男ドズルの妻(ミネバの母)ゼナの妹であり、ドズルの恋人だった。ドズルを姉にとられた時からハマーンはザビ家に復讐を誓っており、ミネバの後見人となったのもザビ家再興という隠れ蓑で有利にことを進めるためだったのだ。

ずんだ なんだって?衝撃的すぎて、ぜんぜん内容が頭に入ってこなかったのだ。え?

めたん 大事なとこだけ、もう一度。

N まずハマーンの正体であるが、彼女はザビ家の三男ドズルの妻(ミネバの母)ゼナの妹であり、ドズルの恋人だった。ドズルを姉にとられた時からハマーンはザビ家に復讐を誓っており、ミネバの後見人となったのもザビ家再興という隠れ蓑で有利にことを進めるためだったのだ。

ずんだ ハマーンは……ゼナの妹で、ドズルの恋人?今の設定と全然違うのだ。これはさすがに、ボツ設定だよね?

めたん もちろんよ。解説にも「トミノメモにあった」と書いてある。本当に最初期の構想だったんでしょう。

ずんだ 最初期の構想では、ハマーンはドズルに恋してて、姉であるゼナにドズルをとられたからザビ家に復讐を誓った。すげえ話なのだ。

めたん さすがに富野さんも「これはやりすぎだ」と思ったのかしらね。ハマーンではなく、姉のマレーネがドズルに捨てられた設定にした。でも、怒りの性質はまったく一緒よ。

めたん 私は、ないし私の姉は、ドズルに……ザビ家に利用され、捨てられた。恋心を弄ばれた、あるいは堕胎くらいはあったかもしれない。そこでドズルの遺児ミネバの後見人を装いつつ、ザビ家に復讐を誓った。

ずんだ 女は怖いのだ。

めたん そう考えると、ハマーンがザビ家再興をうたった気持ちもよくわかるわ。ハマーンはザビ家に対し、まったく愛や尊敬を示してない。ミネバに情はあるようだけれど、彼女さえ利用しようとしている。

ずんだ 自分たちを利用したドズルやザビ家への復讐に、今度は逆にミネバを利用して、ザビ家を乗っ取ってやる……。そんな恐ろしいこと、考えるものかな?

めたん ロシアの小説家・劇作家に、アントン・チェーホフという人がいるわ。彼の代表作『桜の園』では、ロパーヒンというヤバいキャラが出てくる。

めたん 農奴出身のロパーヒンは、昔の主人だった奥様に復讐するため、商人として成り上がり、奥様の大事にしてた桜のお庭を買い取るの。そんで「俺の物だ!」って大喜びして斧で桜をガンガン切り倒してくの。

ずんだ やべーやつなのだ。なんでそんなことするんだよう。

めたん ルサンチマンとはそういうものよ。虐げられてた身分のものが、主人を逆に従えて、復讐を遂げる。

ずんだ 自分の主人を、自分に従わせる……。確かに僕も、前のバイト先のクソ店長を、アゴで使ってみたいかもしれないのだ。

めたん いずれにせよ、ハマーン自身がドズルの愛人で、捨てられたという設定は消えた。ただ形を変えて残っている。それが……、シャアとの関係なの。

ずんだ シャアとの関係?捨てられた?あっ……。

めたん ハマーンは、ドズルではなくシャアに捨てられたという設定になる。そして姉を捨てたザビ家と自分を捨てたシャア、それぞれに違う憎しみとルサンチマンを抱えた複雑なキャラになった。

ずんだ ドズルに捨てられた設定がスライドして、シャアに捨てられたことになり、ハマーン様が誕生したのだ。

めたん ここまでの要素を踏まえた上で、さっきも一部紹介したハマーンの台詞を見てみましょう。第32話「塩の湖を越えて」より。

N (私の姉はザビ家に尽くし、宇宙の果てで死んでいった。しかし、私は死ぬものか! 新しい血をザビ家に加え、必ずや復活してみせてやる。ネオ・ザビ・ファミリーを……)

めたん ドズルに捨てられた姉の仇に、ミネバを利用する。政略結婚やグレミーたちの血を利用してよりザビ家支配を盤石にし、自分がそれを裏から操る。

N 「私はミネバ様を、ジオンの血を利用して ザビ家を見返したいだけだ」(第44話)

めたん ハマーンはミネバを利用してるだけ。ジオンの血を利用してるだけ。やりたいのは、ザビ家を見返すこと。元農奴のロパーヒンが、桜の園を買い取り、オノを入れて回ったように。

ずんだ とんでもねえ私怨なのだ。

めたん でもね。それだけでもなかったみたい。Zガンダム最終話では、クワトロにこんなことを言ってるの。

N 「ザビ家を再興させる。それがわかりやすく、人に道を示すことになる」

ずんだ ザビ家再興で、道を示す?

めたん ハマーンは、本当は何を目指していたのか?それについては最後に触れるわ。

めたん とにかく一年戦争が終わり、ハマーンは火星の向こうへ落ち延びる。そしてその暗くて寒いアステロイド・ベルトで、人生を揺るがす体験をするのよ。

N ポイント4.歴史2 アステロイド・ベルト時代

めたん 記録によればハマーンは、宇宙世紀0081年の3月にアステロイド・ベルトへ到達した。ゼナやミネバ、マレーネの他、父マハラジャ・カーンもそこにいたわ。

めたん マハラジャ・カーンはジオン残党の実質的なリーダーだった。その後、何らかの事情でマレーネとマハラジャが死ぬ。自然死、病死、事故、毒殺、暗殺、いくらでも思いつくわね。

ずんだ 火星の向こう、周囲はみんなジオン星人……。この状況、だいぶ恐ろしいのだ。

めたん そして何故か、まだ若いハマーンがミネバの摂政に選ばれる。実質的なアクシズのリーダーね。

めたん 考えられる理由は2つ。1つは、ハマーン自身の資質。

めたん 先ほどは少しケチもつけたけれど、基本的には超優秀。若く、美しく、賢く、豪胆。あと何より声がいい。

ずんだ それは榊原良子さんの声が良いだけであって、ハマーンとは関係ないのだ。

めたん 昔から独裁者やリーダーは、いい声の人が多かったのよ。ドイツの宣伝大臣ゲッペルスの声紋はジョン・レノンに酷似してた、

なんてエピソードもあるくらい。

めたん

そして最大の要因は……。ハマーンが、とびきり優秀なニュータイプだったってこと。

ずんだ

それってそんなに大きなこと?ニュータイプなんて、所詮は戦争の道具でしょ?

めたん

いえね。暗殺されたとは言え、ジオン公国建国の祖はジオン・ダイクン。彼の思想は一言で言うと、こうだったわ。

N

地球を保護せよ。(エレズム)

宇宙移民の自治を認めよ。(コントリズム)

すべての人類は宇宙へ上がれ。

そこからやがてニュータイプが生まれる。(ニュータイプ思想)

めたん

そして、この時点でジオンではっきり確認されたニュータイプは、ララァ、シャリア、シャアの3人だけ。ただしシャアは疑問符つき。私は完全なニュータイプだと思ってるけど。

ずんだ

この頃は自分でも「ジオングちゃんと使えるかな」なんて心配してた頃だしね。

めたん

こんなとき、天才美少女ニュータイプが現れたらどう?国民的スター、アイドルどころか、ジオン・ダイクンの予言が実現した!と大騒ぎ間違いなし。

ずんだ

火星の向こうでニュータイプに目覚めた……なんてのも、エモいストーリーになりそうなのだ。

めたん

そしてもう一つの理由は、シャア・アズナブルによる推薦。このときシャアがダイクンの子の身分を明かしていた可能性は低いけど、赤い彗星の雷鳴は、十分大局を動かすわ。

ずんだ

マハラジャ・カーンの娘さんが、実はニュータイプ。しかもシャアまで推薦してる……なんて、確かに任せちゃいそうなのだ。

めたん

小説版では、シャアはハマーンがミネバの摂政になったことを知らない、なんて設定も出てくるんだけど、これは無視するわ。

ずんだ

なんで。

めたん

後で出てくるけど、アニメ版ではハマーンがシャアを地球へ送り込んだ、ととれるセリフが出てくる。その時点で摂政になってたか、それに近い権力を手にしていたと考えないと矛盾してしまうの。

ずんだ

じゃあとりあえず、ここではシャアが摂政に推薦したということにして進めるのだ。

めたん

自分で推薦した以上、当然シャアも補佐していた。シャアを中心として軍事・政治・経済などのブレーンが集められ、ハマーンのサポートにあたっていたはず。

めたん

しかし、ここへ来て大変なエラーが起きるのよ。それは……、シャアの裏切り。

ずんだ

裏切り?

めたん

『機動戦士Zガンダム』33話・「アクシズからの使者」では、こんな会話がある。まずはミネバのセリフから。

N

「長い間の偵察、ご苦労だった!いよいよアクシズが動き出すときがきた!ザビ家再興のために、力を貸してくれよ。スペースノイドの真の繁栄は、ジオンの復興いかんにかかっている」

ずんだ

このミネバの、言わされてる感満載のセリフで、シャアはぶち切れるんだよね。よくもミネバをこんなにしたなって。

めたん

それはシャアの理屈よ。

ずんだ

え?

めたん

ハマーンとミネバ視点から見ると、物事はこうなるわ。同じく33話から、今度はハマーンとシャアの会話よ。

N

ハマーン「やはり裏切りかい?シャア……」

シャア「元々、私は裏切りを一切していないよ、ハマーン」

ハマーン「失望したよ。一年戦争の働きがあればこそ、地球圏への偵察に出したが……」

ずんだ

何一つ噛み合ってない。泥沼なのだ。

めたん

ハマーン目線から見たシャアは、こうなのよ。信頼していたからこそ、地球偵察という任務を与えた。

めたん

ところがある、シャアは帰ってこなかった。そしてエゥーゴに潜入して、真っ赤なノースリーブを着て、連邦政府の内ゲバやってる。ハマーンの補佐も忘れて。

ずんだ

確かに。

めたん

ハマーンは、自らの純情をシャアに捧げた。なのにシャアは、それを捨てた。

ずんだ

そ、それは……。男女はいろいろ、難しいのだ。どっちが悪いなんて言えないよ。

めたん

いいえ。シャアが悪いです。

ずんだ

だって、そもそも本当に、つきあってたかどうかと言うか……。肉体関係があったか、なんて、明言されてないのだ。

めたん

絶対にありました。

ずんだ

なんで。

めたん

女とは、そういうものだからです。

ずんだ

説明になってないのだ。

めたん

理由1。ハマーン役の榊原さんは何度か、2人の間に肉体関係があったと考えていると発言している。

めたん

理由2。富野さんもハマーンとセックス、性愛という話題について、極めて重要な発言をしているわ。それは、次の章で扱います。

めたん

でも、一番大事なのはインタビューとか設定資料じゃない。劇中の描写なの。

ずんだ

うちはそういう方針なのだ。

めたん

だからね、もっとも重要なのはこれよ。理由3。2人が単なる「仲良し」とか「信頼関係」でなく、恋人として肉体関係を持っていた証拠と言えるセリフがある。

ずんだ

そんなのあったっけ?

めたん

それはこれ。ハマーンじゃなくて、グレミーのセリフなんだけどね。第18話「ハマーンの黒い影」より。

N

「ハマーン様は夏がお気に入りらしい。確か、以前もそうだったな?」

ずんだ

あー。それでハマーンは、モウサの中の居住区域を夏の設定にして、水着着てサングラスして日光浴してるのだ。……だから何?

めたん

この異常さがわからない?

ずんだ

わかんないのだ。

めたん

そのヒントはここにあるわ。『機動戦士ガンダムZZ』第27話「リィナの血・前編」、そして……。『機動戦士ガンダム0083』第9巻より、いずれもハマーンのセリフ。

N

「私はアステロイド・ベルトで、ぞっとするほど暗く冷たい宇宙を見つめながら、何年も生きてきた」

N

「寒い……。ここにあと何年……」

ずんだ

アステロイド・ベルトは寒い、って話だよね。燃料とかも少なくて、あんまり日も差さなかったろうし。

めたん

もしそうなら、地球圏に戻ってもまだ真夏の気候を再現する意味は何?

ずんだ

え?

めたん

アステロイド・ベルトは寒いから、ハマーンは夏の気候にするのが好きだった。そんな理由だとしたら、なんで今、地球圏でもそれをしているの?

ずんだ

ああ、そうか。もう地球圏にいるんだもんね。アステロイド・ベルトが寒いからって理由じゃ、辻褄が合わないのだ。

めたん

寒い、冷たい……。それはね、気温とか、アステロイド・ベルトの問題じゃない。

めたん

シャアのいない世界のことを言っているの。

ずんだ

シャアがいなくて、寒い……。

めたん

そう。

ずんだ

シャアは、そんなに体温が高かったの?

めたん

あんたはこの先、ガンダムの本とDVDぜんぶ捨てて、少女漫画だけを読み続けなさい。そして乙女心を学ぶといいわ。

ずんだ

そ、そんな……。ガンダムのない人生なんて、カラカラに乾いた砂漠のようなのだ。

めたん

そう、それよ。ガンダムのない人生は砂漠。同じことをハマーンも思ったのよ。

ずんだ

同じこと。

めたん

0083年、シャアがアクシズを離れた。そしてハマーンは知ってしまったの。ひとりぼっちの人生は、こんなに寒くて冷たいのかって。

ずんだ

なるほどなのだ。シャアがいないから、寒くて冷たいって思ったんだ。

めたん

ただでさえさみしいアステロイド・ベルト。でも恋人がいなくなって、本当の寒さに気づいた。それ以来ハマーンは、夏の気候を好むようになった。

めたん

一人で過ごす人生は寒い。だから地球に戻っても寒いまま。ハマーンは捨てられた。だから気候を夏にして、水着になって太陽を浴びているの。

ずんだ

恋じゃん!

めたん

恋よ!あんたらはずっとミノフスキー粒子とかアポジモーターとか、プロペラントタンクとかIフィールドジェネレーターとか、そんな話ばっかしてるから気づかないだけで、ガンダムは恋よ。

ずんだ

ミノフスキー粒子が濃すぎて、ハマーン様の恋に気づけなかったのだ。

めたん

なんでもミノフスキー粒子で説明するの、よしなさい。そういうとこだぞ。

ずんだ

ごめんなのだ。

めたん

ハマーン様は夏が好き。それはただのエピソードじゃない。孤独なハマーンの気持ちを表していた。そして!

めたん

かの有名な、この写真。この季節はいつかしら?わかる?

ずんだ

えーと、長袖だから、秋口くらい?

めたん

夏です。

ずんだ

いや、春先か秋に見えるのだ。

めたん

絶対に夏です。比較的標高の高い土地なんでしょうね。軽井沢とかスイスみたいなもん。背景に山もあるし。

ずんだ

コロニーだからそれは関係ないのだ。

めたん

夏でも大人は長袖を着るのよ。特に昭和の男は。だから絶対に夏です。いい?

ずんだ

はい。

めたん

というわけで、つまり。ハマーン様にとって夏は、シャアとの恋の季節でもあった。

めたん

それを思い返して、一人、モウサに人工的な夏を作ってる。泣けるでしょう。

ずんだ

かわいそうなのだ。

めたん

さぁ、ここで思い出して。前のポイントのエピソードを。それは……。

めたん

ドズルに利用されて、捨てられた姉、マレーネ。それと、シャアに利用されて、捨てられた私、ハマーン。これは、ものすごく似ているのよ。

ずんだ

どちらも軍人とか、政治家とか、男に利用されて、向こうの都合で捨てられてるのだ。

めたん

そしてどちらも、本当に愛していた。これがハマーンの原点。いいえ、すべてと言ってもいいかもしれない。捨てられた女、忘れられた私。

めたん

続いてのポイントでは、いよいよ『機動戦士Zガンダム』時代のハマーンを論じるわ。ただし……現実ではなく、こちらのハマーンから。

N

ポイント5.並行世界1

ゼーター・逆襲のシャア

めたん

これは1984年7月の日付入りの企画書。タイトルは「ゼーター・ガンダム 逆襲のシャア」。

ずんだ

ああ。そういやZガンダムの仮タイトルって、「逆襲のシャア」だったんだよね。

めたん

ここにはこんな展開が書かれているわ。「シャアがアムロたちと共闘し、第2のニュータイプ……カミーユ・ビダンを守ろうとして戦う」

めたん

そしてここにハマーンも登場し、ある驚きの役割を果たすんだけど……。『富野由悠季の世界』展覧会図録、258ページから引用するわ。

N

「シャアはニュータイプの可能性を信じ、しかし、人はもろく、自分は冷たい人間ではないのか、という不安の中で、ハマーン・カーンの膝の上で死んでゆく」

ずんだ

シャアは、ハマーン・カーンの膝の上で死んでゆく?

めたん

ハマーンは最初、こうだったのよ。傷つき、不安の中で死んでいくシャアを膝に乗せ、看取ってやる存在。

めたん

あえて言おう。死んでしまったララァの代わりに、「私の母になってくれる」存在……。それがハマーンだった。

ずんだ

当初はこんなイメージがあったのだ。

めたん

初期ハマーンのイメージを探る上で、もう一つとっても重要なインタビューがあるの。

めたん

同じく『富野由悠季の世界』展覧会図録、253ページから。富野さんは劇場版Zのラストについて、こう質問される。

めたん

「最後に抱き合うカミーユとファは、セックス礼賛に見えますが?」新訳Zのラストでは、カミーユがファと抱き合うことで、触れられる相手、一緒にいられる存在の大事さに気づくのよね。

めたん

この質問に対し、富野さんはこう答えているの。

N

劇場版『Zガンダム』のことは……、もうほとんど覚えてないんですよ。

めたん

これはまぁ、もう10年以上前のことだし、仕方ない。多少、照れも入っていると思うけれども。

めたん

重要なのはここから。セックス礼賛というトピックで、何故か急にハマーンと……。『無敵鋼人ダイターン3』の話をしだすのよ。

ずんだ

え!

N

むしろ官能性で思い出すのはハマーン・カーンのことです。もともと“女の匂い”というものをアニメの中に取り込めるかな、と思ったのは『無敵鋼人ダイターン3』のコロスなんです。コロスのキャラクター設定ができた時、「俺、作家になれるのかもしれない」と思ったんだよね。ただまだコロスは物語上のギミックでしかない部分があって、それがハマーン・カーンにポンと繋がってる。

めたん

コロスとは、ダイターン3に登場する敵の女キャラ。敵の黒幕ドン・ザウサーに代わり、軍の指揮をとっている。そして、ドン・ザウサーを深く愛しているの。

めたん

その愛は深く妄信的。各種Wikiにある記述を拾ってみましょう。

N

「ドンのことを愛しており、昏睡状態にあるドンの意思を感じ取ることができる唯一の人物」

「ドンに対する愛は本物」

「死の間際までドンの事を思い、その思念がドンの覚醒へと繋がる」

N

「あまり自身が作ったキャラクターに対して愛着を持たない富野監督が珍しく入れ込んだキャラクター」

「感情移入して(し過ぎて)演出を施した稀有な存在」

(pixiv百科辞典)

N

「ドンを愛しているが、その愛情はどこか盲目的」

「万丈からも『ドンを愛することしか考えられないメガノイドになっている』と指摘されてしまっている」

「レイカはコロスを『寂しそうなメガノイドだった』と評していた」

(スーパーロボット大戦Wiki)

めたん

コロスはこういうキャラクター。「愛が深く」、「盲目的で」、「どこか寂しそうな」、「女の匂いのする」キャラ。

めたん

ドン・ザウサーを愛し抜いた、コロスという存在。その官能性が、ハマーンに繋がっている……と、富野監督は語っている。

ずんだ

そんなハマーンが、シャアを膝の上に乗せて看取る。本来のハマーンのイメージは、だいぶ愛の深いキャラクターだったのだ。

めたん

その通り。しかし、展開が変わった。そして……。シャアは地球へ逃げ、帰らなくなった。

めたん

これだけ深く、シャアを愛していたハマーンは、コロスの気持ち、官能性を与えられたまま、取り残されてしまったの。

めたん

同じインタビューで、さらに富野さんはこう語っているの。

N

ハマーン・カーンって、言ってしまえば「セックスしたいんだけども男がいない」と思ってる人なんです。シャアに逃げられてしまって、周囲に頼れる人間がいない人だから。そういう性愛に絡むような衝動を内在させるキャラクターでなくては、物語にはならないんです。

めたん

誰かとセックスしたい。繋がりたい。そういう「性愛に絡むような衝動を内在」したキャラがハマーン。しかしハマーンは捨てられた。だからこそシャアを求め続ける。

ずんだ

僕は処女で童貞で、というか枝豆だからわからないんだけど、恋とはそういうものかしら。

めたん

男女のセックスって違うのよ。男は、愛がなくても誰とでもセックスできる。一方女は愛がない男でも、一度寝ると愛してしまったりする。

めたん

それは生殖のシステムと関係してるのね。男は種をばら撒くのが仕事だけど、女は守り育てるのが本能。一度寝た男はもう子供の父親で、自分の夫。そこに執着が生まれる。

めたん

劇中の描写を見ても、この富野さんのインタビューを見ても、ハマーンのシャアへの執着はだいぶ深くて強い。これを単なるプラトニックラブだったと捉えるのは無理がある。

めたん

むしろ逆ね。「官能性」と「性愛」をどうアニメで表現できるか?その答えが、コロスでありハマーンだった。

めたん

なお劇場版Zについては、こんなインタビューも残っているわ。第2部「恋人たち」というタイトルについて。

めたん

ムック本『Zガンダムヒストリカ 9』収録の、富野監督インタビューより抄録するわ。実は「恋人たち」の中には、シャアとハマーンも含まれていたというの。

N

(映画第2部のラストにハマーンが登場したのは、シャアとの)因縁だなんてたいそうなものではないです。あそこは『恋人たち』というタイトルのひとつで、ハマーンも昔の男に会いに来たという、それだけのことです。ハマーンはただ、シャアに一緒にいてほしかっただけなんですよ。

N

ハマーンはシャアと二人だけで会いたかったのに、周りにあれだけ邪魔者がいて、二人っきりになれないんです。絶対そう。そしてシャアと寄り添いたいと思って本当に来たのはいいけど、ミネバをダシに使って可愛くないことをやるから、狂っていくんですよ。そんなこと言わずに、ただ「寝ようよ!」と言えば、おそらく全部丸く収まったかもしれないんです。

ずんだ

あ……、あんなに複雑なドラマだと思ってたのに、「ハマーンは、ただシャアに一緒にいてほしかっただけ」?「寝ようよ!」と言えば、丸く収まった?マジかよなのだ。

めたん

後ほど述べるけど、ハマーンは自分の感情を語れない人。それが事態を複雑にしているだけで、本来の動機はとてもシンプル。

めたん

シャアと一緒にいたいだけ。そして本来、シャアを看取るはずのキャラ。シャアを愛しすぎた、さびしい女。本来のハマーンは、それだけよ。

めたん

しかし、初期構想から展開が変わってしまった。シャアに捨てられ、愛と復讐とルサンチマンが入り混じり、もうハマーンは、シャアを看取ることができない。

めたん

それではシャアに捨てられたハマーン……、つまり、現実の歴史における『Zガンダム』時代のハマーンはどんな女だったか?手短に解説するわ!

N

ポイント6.歴史3

グリプス戦役時代

めたん

TVアニメ版『機動戦士Zガンダム』において、ハマーン・カーンの初登場は33話「アクシズからの使者」。

めたん

大量のガザCや訓練不足の学徒兵を率い、ブラフを連発しつつも第三勢力として戦況を大いに揺さぶった、というのはすでに話したとおりね。

ずんだ

何がしたいかよくわかんないから次の行動も読めなくて、結果的にみんな振り回されてたのだ。

めたん

ハマーンの最終目標についてはもう少しあとで結論づけましょう。大事なのは、カミーユとの出会い。

めたん

カミーユはハマーンと出会い、自分の母親のイメージを思い出してる。逆にハマーンが思い出したイメージは、シャアとの蜜月時代。

めたん

カミーユはハマーンに母性を感じた。ハマーンはカミーユに、自分を導く強い男のイメージを見た。後にジュドーに感じたものと似ているわ。

めたん

そしてニュータイプ同士、相手の内面を感じ取るんだけど……。その結論部分だけ正反対になるのよね。

N

カミーユ「人はわかり合えるんだ」

ハマーン「よくもずけずけと人の中に入る!恥を知れ、俗物!」

カミーユ「僕達はわかり合えるかもしれないだろ!」

ハマーン「貴様もシャアと同じだ!貴様は確かに優れた資質を持っているらしいが、無礼を許すわけにはいかない!」

ずんだ

とりつくしまがねぇのだ。

めたん

こうして2人は決裂する。私見ながらこれは、ニュータイプの歴史上、最も重要な瞬間よ。

ずんだ

2人がケンカしただけじゃないの?

めたん

最初のニュータイプ、アムロとララァは共感し、可能性を感じた。認識力が拡大すれば、人はわかりあえる。ところが……。

めたん

Zでは、その真逆の可能性が示された。「相手の気持ちがわかったが、同意はできん」。「そもそも私の気持ちをわかるな」という拒絶。

ずんだ

あー。でも、なんかわかるのだ。「気持ちはわかるよ」って言われて嬉しいこともあれば、お前なんかにわかるわけねーよバーカ、って思うこともあるのだ。

めたん

特にハマーンは、極端に感情表現のヘタな女性。今もシャアを求めている心……という、自分のナイーブな部分が見られて、怒り狂ってしまった。

めたん

人間、裸の身体を見られただけでもあんなに恥ずかしいんだもの。裸の心を見られたら、比べ物にならないほど恥ずかしいでしょうね。特にハマーンのような、闇の多い女性の場合。

ずんだ

こわいのだ。

めたん

1stは「いずれみんなわかりあえる」という希望を示して終わった。でも続編を作れと言われた以上、論理的に言ってこれしかないの。「わかりあえませんでした」。だって戦争やってんだからね。

ずんだ

カミーユとハマーンの決裂は、それくらい重大な出来事なんだね。

めたん

Zガンダム全50話の中で、もっとも重要な瞬間だと思うわ。つまりハマーンはニュータイプの希望をぶっ壊す、言わばダークサイドの天才ニュータイプだったわけ。

めたん

なおこの展開は、基本的には小説版でも変わっていない。小説版だと2人でフランス料理食べて、相手に好意まで抱くんだけど、最終的には戦場で決裂しているわ。

めたん

ここでもお互いに、母親やシャアのイメージを見ている。特にハマーンがカミーユの中に見たイメージは複雑なので、ここに引用しておくわ。

N

ハマーンは、カミーユにダブるシャアの姿を見ていた。その上に左から流れてくるシロッコの姿が見え、さらにドズル・ザビの柔和な表情が、姉の姿に包まれるようにして見えた。(略)しかし、ドズルと姉の姿は、ハマーンの意思の中で嫌悪感はなかった。そうだろうという納得があった。「命の力が弱かったのよね……姉さんは……」

(小説版Z第5巻・244ページより)

ずんだ

過去のトラウマ劇場みたいになってるのだ。でも、ドズルと姉への嫌悪感はなかった?

めたん

そこが重要なのよ。ハマーンの本心がうかがい知れるわ。

めたん

ハマーンは、カミーユともシャアとも通じ合った。通じ合った上で、それを拒んだ。

めたん

ニュータイプとしての直感や深層心理では、カミーユやシャアのような導いてくれる男性を求めた。でも自意識、エゴがそれを拒んだ。だから言うのよね。

N

「土足で人の中に入るな!」

めたん

同じように、実はもう、ドズルと姉マレーネのことも、ニュータイプとしての直感や深層心理では許してるかもしれない。姉マレーネが死んだのはザビ家のせいでなく、体が弱かったんだと。

めたん

でもそれを自意識が、エゴが認められない。もはやザビ家への復讐心は彼女の心の大黒柱になっている。今さらそこだけ抜けないの。

ずんだ

ホントはもう許してんだけど、なんか腹立つし謝るのイヤだから謝れないってこと、あるよね。僕も寝坊して謝れなくて、そのままブッチしたバイトいっぱいあるのだ。

めたん

カミーユは「僕たちはわかりあえる」と感じた。しかしハマーンはそんなカミーユに対し、ここまでクソミソに食ってかかっているわ。小説5巻、247ページより。

N

「ウソだ!!お前は敵だ!!(略)ゼータ。カミーユ・ビダン。私を惑わせたのはお前か!(略)男はっ……皆、シャアと同じだ!優れた資質を持っているのだろうが、男である限り、その力の使い方を知ることはないんだよっ!」

ずんだ

いるよね、こういう人。男である時点でダメだみたいな……。

めたん

誰より深い、コロスのような愛を持っていたハマーンは、それが裏返り、ミサンドリーすれすれの憎悪を燃やすようになってしまったのね。

N

ポイント7.並行世界2

Zガンダムパート2

ずんだ

また新たな並行世界なのだ。Zガンダムパート2?

めたん

1985年10月。ちょうどTVで「アクシズからの使者」が放映されてる頃ね。このとき、富野さんは続編の企画書を書いているの。

ずんだ

続編って、ZZのことか。最初はZZじゃなくって、「Zガンダム・パート2」って呼ばれてたの?

めたん

その通りよ。でもこれ、単に呼び名が違うだけじゃなくて、後々大事な意味を持つからよーく覚えておいて。

ずんだ

今回はホントに複雑なのだ。さっきの並行世界では、ハマーンがシャアの最後を看取っていたね。ハマーンの膝の上でシャアが死ぬラストだったのだ。

めたん

そして今回は、その逆。シャアがハマーンを殺すという展開が書かれている。

ずんだ

えっ!

めたん

企画書の文章を引用するわ。読みやすさを考え一部分書き直しています。正確な原文はアニメック87年2月号をご参照ください。

N

地球連邦政府への粛清を終えて、シャアはハマーン・カーン軍に参加する。そして、しばらく実戦の中で、ジュドーを鍛え上げる教師となる。しかし、ハマーン軍が地球攻勢作戦をはじめた頃、シャアはハマーンを討つ。

ずんだ

シャアがハマーン軍に参加して、しばらく敵のジュドーをスパーリングしてやって……。最後はハマーンを討つ。なんでだろう?

めたん

これつまり、グレミーがやるはずだったことをシャアがやってるのよ。ハマーン軍の中から反乱を起こすということ。

ずんだ

そういやグレミーの反乱も、地球降下しただいぶ後、番組後半だったのだ。

めたん

シャアの意図を深読みしていくと、映画『逆シャア』との繋がりが見えて面白いんだけど……。それはメンバーシップ限定動画でお話しましょう。

ずんだ

ぜひ聴きたいのだ。ぜひメンバーシップに入りたいのだ。入ってこのチャンネルを応援したいのだ。

めたん

今回はハマーン特集なのでハマーン視点から見るけど、すごいわよね。本来、ハマーンはシャアを膝に乗せて看取る役割だった。ところが今回、ハマーンは、シャアの手にかかって殺される。

ずんだ

あまりにもかわいそうなのだ。

めたん

ところが私の意見は違うのよ。ハマーンは、確かにシャアに殺される。でもそれは女にとって……。いえ、人にとって幸せなことなのよ。

ずんだ

いよいよ何を言ってるのだ。

めたん

恋する女にとって、最悪の傷、侮辱は何だと思う?それは振られることでもないし、罵倒されることでもない。嫌われることでもないし、殺されることでもないの。

ずんだ

じゃあ何?

めたん

無視よ。連絡さえよこさない。思い出しもしない。まったく何の関心も向けてくれない。そして勝手に生きている。

ずんだ

好きの反対は嫌いじゃなくて無関心、って言葉なら、僕でも聞いたことあるのだ。

めたん

ZとZZのハマーンは、まさにその状態。捨てられ、忘れられ、シャアは勝手に楽しくエゥーゴしている。軍艦で追いかけてきて、MSで脅迫しても、歯牙にもかけてもらえない。

めたん

一度だけ、シャアに頭を下げさせたとき。ハマーンは嬉しそうだった。また最終決戦で戦いながら、やはりハマーンは嬉しそうだった。

ずんだ

ヤンデレと呼ばれるゆえんなのだ。

めたん

「どうだ、私を無視できないだろう」。そういう暗い喜びが、ハマーンの心の底にある。いいえ、どんな人の心の底にも、それはあるのよ。私を見ろ!

めたん

だからこの、「シャアに討たれる」ハマーンは、確かに悲劇の主人公。でも主人公なのよ。そこには暗い喜びがある。好きな人に無視されるくらいなら、殺された方がマシなもの。

めたん

ところがある実際のZZでは、その逆だった。シャアは殺しにも来てくれない。会いにも来ない。仲間になることも、寝返ることもしない。完全無視よ。

ずんだ

でもそれは、映画『逆襲のシャア』が決まっちゃって、シャアが登場できなくなっただけなのだ……。

めたん

理由がメタだろうと何だろうと、作中のハマーンには関係ないわ。フランスで活躍した画家で詩人のマリー・ローランサンという女性が、こんな詩を書いている。

めたん

とても重要なので全文引用するわ。マリー・ローランサン作、堀口大學訳、『鎮静剤』。

N

退屈な女より

もっと哀れなのは

悲しい女です。

悲しい女より

もっと哀れなのは

不幸な女です。

不幸な女より

もっと哀れなのは

病気の女です。

病気の女より

もっと哀れなのは

捨てられた女です。

捨てられた女より

もっと哀れなのは

よるべない女です。

よるべない女より

もっと哀れなのは

追われた女です。

追われた女より

もっと哀れなのは

死んだ女です。

死んだ女より

もっと哀れなのは

忘れられた女です。

ずんだ

一番哀れなのは、忘れられた女……。

めたん

ハマーンは、殺してもらえるはずだった。ところが、映画で忙しくなったシャアから忘れられた。そして一人になってしまった。

めたん

あるいはこうも言える。

めたん

ハマーンは、殺してもらえるはずだった。ところが、映画で忙しくなった富野監督から忘れられた。そして一人になってしまった。

めたん

富野監督の、こんなインタビューが残っているの。アニメック1986年5月号より。ZZ放映開始の2ヶ月後に発売されたものね。

N

──シャアにつきましては?

富野

まだ出て来るかどうかは決まってないけれど、もし出てくれば彼は自分がザビ家をやっても良い、というところまで行けるのではないだろうか。つまりはアーガマが敵になる。

めたん

「ザビ家をやる」というのは、独裁や大量虐殺をやるという意味。そしてアーガマ、主人公たちに敵として立ち塞がる。つまり『逆襲のシャア』のような展開をもう考えていた。

めたん

続いてこう言ってる。

N

そこで『ZZ』が一番不幸だったのは『Z』の継続番組であり、特に世代関係は継がっているということで、つまりハマーン・カーンと言う女性がいる限り、シャアはそうはできない部分があって、そこいら辺りでシャアとハマーンの鬱陶しい話があるかもしれない。

めたん

ハマーンがザビ家の摂政、ネオ・ジオンの代表としている限り、シャアも自由にはできない。そこでシャアとハマーンのごちゃごちゃを描く必要があるかもしれない。

ずんだ

ハマーンはシャアに構ってほしくてちょっかいかけてたわけだから、ある意味では願い通りなのだ。

めたん

そうよね。でも、この続きで、富野さんはこんなことを言っているのよ。

N

いろいろなことがあった末にシャアが“悩む”と言う事から脱してしまったとしたら、彼は途方もなく強いでしょう。どれだけ強いか、と言うとそれこそ物語があっという間、『ZZ』なんかは5本もいらずに終わってしまうでしょうね。だから今回の敵はハマーンやマシュマーのような小悪人程度が丁度いいでしょう。

めたん

ネットで度々引用される、「迷いを捨てたシャアは強い」の出典がこれ。

めたん

映画『逆シャア』のときは、敵にアムロがいた。さらにサイコフレームの横流しもした。それでやっと互角の戦いだった。ボロボロのアーガマとジュドーが相手なら瞬殺でしょう。

ずんだ

ジュドーは結構、互角に戦えるんじゃないかな?前半はともかく、後半のジュドーとZZなら、シャアともだいぶいい戦いしそうなのだ。

めたん

いいえ、瞬殺よ。と言うか別にシャアは一騎打ちがしたい人じゃないから、ジュドーとの対決は避けて、コロニー落としとか拠点爆撃とかするわ。

ずんだ

そうだったのだ。『逆シャア』でもフィフスのときはすぐ撤退してるし、アクシズでもラスト以外はアムロよりアクシズ落下を優先させてたのだ。

めたん

それ以外にも潜入工作とか政治工作とかいろいろできる。いざとなれば赤い彗星、ダイクンの息子という雷名を出せば、民衆の支持も得て、ピンで独裁者もやれる。

ずんだ

ピン芸人みたいに言うなよ。

めたん

つまり、ガチで来たシャアには全然勝てない。だからハマーンくらいの「小悪人」でちょうどいいだろう。そういう認識なのよ。

めたん

そして映画が決まり、シャアは去り、ハマーンは……。二度とシャアに会っていない。殺してさえもらえない。ただ、忘れられただけ。

N

死んだ女より

もっと哀れなのは

忘れられた女です。

ずんだ

シャアに殺されるはずだった並行世界と、シャアに忘れられた現実世界……。どちらもかわいそうなのだ。

めたん

そして「Zガンダム・パート2」あらため。「ガンダムZZ」の企画がスタートし……。ここでさらにハマーンは、「忘れられた」「よるべない」女になるのよ。

N

ポイント8.「ZZ」の意味

めたん

Zパート2ではなく、ダブルZ。このタイトルの意味について、メイン脚本家の遠藤明吾さんはこう語っているわ。月刊ニュータイプ1987年3月号より。

N

ダブルゼータは、双生児が生み出す物語がテーマだ!ダブル・ゼータには双子の組み合わせが多いということを、みなさんはお気づきになっていたでしょうか。だから“ダブル”ゼータなのだと、かの総監督はおっしゃっていました。

ずんだ

双子が多いから、ダブルゼータ!ZZは双子が生み出す物語だったのだ。

めたん

そして双子の代表例としてプルとプルツーを挙げている。ただし、ここ。一つ大きな間違いがあるの。

ずんだ

なんだろう?脚本の遠藤さんが嘘言うわけないと思うのだ。

めたん

正解は、ダブルの意味。双子は英語でツイン。ダブルじゃないわ。

ずんだ

英単語のミスくらい、許してやれよ。

めたん

全然違うのよ。ツインとダブルは。

ずんだ

僕日本人だからよくわかんないのだ。

めたん

でもこれ、単に重箱の隅をつついてるんじゃないの。むしろ、「ダブル」の方が、言ってる意味に合ってるのよ。

ずんだ

どういうことなのだ?

めたん

ダブルは代役とか分身、生き写しって意味。「ドッペルゲンガー」のドッペルと語源はまったく一緒。映画撮影で使う代役は、ボディ・ダブルなんて言ったりするわ。

めたん

そしてZZには双子だけじゃなく、実に多くの代役・分身・生き写しが含まれているのよ。例えばこう!

めたん

プルとプルツー、サラサとラサラ、ニー・ギーレンとランス・ギーレン。これらは双子だけど、同時にダブル、分身でもある。それ以外でも泣き虫セシリアと弱虫トーレスなど対の設定は多い。

めたん

他にもジュドーとカミーユは、同じニュータイプだけど見事な裏表。親がいるのに歪んだカミーユと、親もいないが元気なジュドー。NTの力を人殺しにしか使えないカミーユと、その逆のジュドー。

めたん

ZZとZ、Mk-2というガンダムの2番機、百式も2号機という設定。マシュマーはシャアに代わるライバルとして考えられた。さらにネオ・ジオン自体がジオンの代替物ね。

めたん

ジュドーとリィナという兄弟は、シャアとセイラという兄弟のダブル。これは初期プロットではジュドーがシャアを倒す役割だから。そしてセイラがリィナを救いにくるのも、このダブルの関係を作るため。

めたん

その証拠に、初期プロットには実はリィナは出てこないの。「ダブル」Zになるとき、まるでセイラの対にするためのように、ジュドーの妹という存在がぽんと生まれてくる。

ずんだ

リィナって最初、いなかったんだ。

めたん

エマさんが生きてる設定だったのよ。どちらも声優は岡本麻弥さんね。

ずんだ

最初はエマさんのつもりでキャスティングしてて、出なくなったから新しく生まれたリィナにスライドした……なんて、そんなことはさすがにあるわけないか。

めたん

それはわからないわね。でも以前解説した通り、ジュドーは最強NTとして作られたキャラ。シャアと対にするために、リィナを足したのは考えられる。

めたん

他にも……。

めたん

正統なるザビ家の後継者ミネバと、ザビ家を名乗る簒奪者グレミー。あるいはハマーンとグレミー、シャアとグレミーというダブルも面白い。そもそもグレミーはクローンという噂で、ギレンのダブルだわ。

ずんだ

対の設定、ホントに多いんだな。

めたん

Zパート2からZZへとブラッシュアップする際、きっと富野さんはジュドーとシャアの対比を考えたのよ。一体どういうキャラクターがシャアを倒すべきか?

めたん

そのとき、きっと、シャアとそっくりだけど正反対……。シャアとセイラのダブルだけど真逆というイメージで、ジュドー・アーシタはつくられたんじゃないか。

めたん

同じニュータイプでも、その力を殺人でなく人を守るために使える人。どちらも妹以外に家族はいない、あるいは出てこないけど、ジュドーはリィナに愛されていて、シャアはセイラに憎まれてる。

めたん

そしてジュドーは生命力とか未来、「明日」のキャラクター。シャアは暗殺とか復讐とか、「過去」のキャラクターね。シャングリラの仲間に囲まれてるジュドーと孤独なシャア、これも対比。

ずんだ

なにもかも正反対なのだ。ジュドーとシャアのケンカ、見てみたかったな……。

めたん

陰だったカミーユに対し、ジュドーは陽。そしてシャアと様々な共通点を持ちながら、真逆のダブル。そのためにリィナの存在が必要になったのね。

ずんだ

初期プロットでリィナがいなかったのはびっくりだね。

めたん

そして、プルのこのセリフが生きてくるわ。36話「重力下のプルツー」より。これはダブルゼータという作品全体を貫くテーマになる。

N

プル「人はね。人間はね、自分を見るのが不愉快なのよ。でもね、どんなに不愉快でも、どんなに憎くっても、自分自身を殺すことも、自分自身をやめることもできないのよ」

めたん

あちこちにダブル、自分の分身が配置されているからこそ響くセリフ。プルツーはプルというダブルと出会い、自分について考えた。

めたん

同様に、シャアはきっとジュドーを見て、自分について考えたはずよ。明るく元気なニュータイプ。妹と愛し合い、力強く生きる少年。どっちも赤い服着てるのに、過去に縛られてる男と明日を生きる少年。

ずんだ

服は関係ないのでは。

めたん

それどころか作品自体もダブルなの。ガンダムで破滅するZと、ガンダムで人を救うZZ。NTはずっと人殺しの道具のZと、NTが木星へ旅立ち明日を切り開くZZ。

ずんだ

とにかく暗いZと、明るいZZ。子供にわかりづらかったZと、子供を楽しませようとしたZZ。そんなダブルも感じるのだ。

めたん

なんて考えると、とても面白いタイトルでしょう?「ダブルZ」。素晴らしい変更だったと思うわ。ただし……。

ずんだ

ただし?

めたん

これにより、ハマーン様はより孤独になってしまうのよ。

ずんだ

どういうこと?

めたん

本来のプロットなら、セイラもリィナも出てこなかった。そしてシャアはハマーンの元へ帰り、軍に参加する。しかし……。

めたん

「ZZ」になる中で、いろんな対の関係が作られていった。その結果、ハマーンだけは誰とも対にならない、孤独な存在になっていってしまったの。

めたん

それどころかシャアやジュドー、本当は誰かに甘えたいのに、どちらからも拒まれ、たった一人で戦う……。そういう立ち位置に追い込まれてしまった。

ずんだ

いろんな「ダブル」が生まれたのに、ハマーン様だけ「シングル」になってしまったのだ。ワロス。

めたん

今の発言で、だいぶ多くの人を敵に回したわよ。ずんだもん。

ずんだ

あっ……。な、なんでもないのだ。シングルって、強くて気高い、ハマーン様みたいなカッコいい生き方なのだ。

めたん

もともと自分から一人を望んでる人ならいいのよね。でもハマーンは違った。ずっと。

めたん

ハマーンはずっと、誰かと一緒にいたかったのよ。

めたん

例えば、シャアにはずっとこう言い続けてる。

N

「ザビ家再興に手を貸せばいい」

N

「これで終わりにするか、続けるか、シャア!」

N

「シャア……私と来てくれれば」

めたん

ジュドーにもこう言ってる。

N

「ニュータイプならば私に従うべきだ」

N

「我々が敵対する理由など何もない。我々は同じニュータイプなのだから。さあ、私とともに来るのだ」

N

「私とお前は同類なんだ。呼び合っているのさ」

N

「ジュドー!私と来い!」

めたん

シャアにもジュドーにも言ってる、「私と来い!」。小説ではカミーユにも似たことを言ってるわ。では、ハマーンは、一体何を求めていたのか?

めたん

さぁいよいよ、『機動戦士ガンダムZZ』におけるハマーンの姿を見ていくことにしましょう、でもその前に……。

めたん

この解説を一つ、挟ませてちょうだい。これでより、ZZの世界観がわかるようになるわ。

N

ポイント9.『サイレント・ヴォイス』歌詞解説

N

星が降りしきる

ペントハウスで

空のオルゴール

ひとり聴いてた

めたん

ペントハウスとはビルやマンションの屋上に立てられた豪華な家のこと。夜空には満天の星。そこで一人、夜のしじまに耳をすませている。

N

ガラスのロープを

目隠しで渡る

みんな淋しいサーカスの子供さ

めたん

昔のサーカスと言えば、捨て子や奇形児・フリークスなど、孤独な子供が集められて見世物にさせられていたわ。双子やシャム双生児もサーカスの花形。

めたん

そんな子供たちが、目隠しで脆いガラスの綱渡りをしている。危険でさみしい、孤独なイメージね。

N

ひとりぼっちの哀しみに

軋んだ綱が心で揺れてる…

めたん

そんな綱渡りのロープの軋みと、孤独で軋む胸の痛みが対比されているわ。

N

サイレント・ヴォイス

サイレント・ヴォイス

優しい瞳をした誰かに逢いたい

サイレント・アイズ

サイレント・アイズ

ささやいてくれよ

そばにいるよって…

サイレント・ヴォイス

めたん

優しい目をした誰かに会いたい。そして「そばにいるよ」とささやいてほしい。そんな沈黙の声、サイレント・ヴォイス。声にならない声を上げる。

ずんだ

サイレント・アイズは?沈黙の目?

めたん

サイレント・ヴォイスは、声にならない言葉だとしたら……。サイレント・アイズは、うまく気持ちを表せない瞳。そんな意味かもね。

ずんだ

ああ……。目まで、自分の気持ちを出すのがへたっぴなのか。なんかわかるな。

N

人という文字を

そっと涙で

手のひらに書くと

胸が熱くて

あきらめるたびに

あきらめ切れずに

途方に暮れる

気の弱いピエロさ

めたん

誰かと会いたい、繋がりたいという思いが胸にこみ上げる。何度もあきらめるが、あきらめきれず肩を落とす。弱気な道化。

N

拍手鳴らない星空で

玉乗りたちが

両手をあげるよ

めたん

誰も拍手をしてくれる人はいない。そう知りつつも、星空へ向けて手を上げる。不安定な、見世物の、哀れな私。

N

サイレント・ヴォイス

サイレント・ヴォイス

優しさ街に降り積もる夜は

サイレント・アイズ

サイレント・アイズ

本当のことが言える気がするね

サイレント・ヴォイス

めたん

街角で目にする優しさ。それを見ると私も、本当の気持ちを言える気がする。でもそれも、サイレント・ヴォイス、声にはならない。

ずんだ

よくハマーン様の気持ちを歌った歌じゃないかって言われてるね。

めたん

歌としてはハマーンに限らず、「みんな」さみしいサーカスの子供。いろんな人のさみしさを歌った歌と言えるけど、その代表がハマーンね。

めたん

非常に危険で、孤独で、見世物・晒し者にされつつ、ピエロとして笑いながら危険な綱渡りを続ける。

めたん

誰か一緒にいてほしい、という声は、沈黙の声、言葉にならないサイレント・ヴォイス。そういう歌ね。

ずんだ

声にならない声を歌にしてるって、おもしろいのだ。

めたん

ではハマーンのサイレント・ヴォイス、声にならない声、音にならない本音とは何だったのか?

めたん

いよいよ最後のポイントよ。見ていきましょう。

N

ポイント10.歴史4

第一次ネオ・ジオン抗争

めたん

ここからはひたすら、ハマーンの欠点を指摘するパートになるわ。

ずんだ

えっ。ひどい。だいぶハマーン様のこと、好きになってきたのに。

めたん

ZZ本編において、ハマーンはずっと何をしていたか?それは「脅迫」よ。

ずんだ

脅迫。

めたん

たとえばサイド1コロニー群の制圧。口の上では「友好関係を築こう」と言いつつ、エンドラのような戦艦とMS部隊を差し向けている。

めたん

その後は大部隊を率いて自ら地球降下し、パレードまでやってる。さらに軍事的にはまったく意味のない市街地へのコロニー落としを経て、地球連邦政府を威圧し、サイド3のコロニーを提供させている。

めたん

やってるのはヤクザと同じよね。「言うことを聞いてくれ。でなければおたくの会社の前に、黒塗りの車がずらっと並ぶことになるぞ」

めたん

グリプス戦役のときもそう。エゥーゴやティターンズだけでなく、シャアに対しても。

N

「これで終わりにするか、続けるか、シャア!」

「そんな決定権がお前にあるのか!」

「口のきき方に気をつけてもらおう!」

ずんだ

最終的にはファンネルでダルマにしてたもんな。

めたん

そしてミネバに対してもそうだった。小説、第5巻94ページより。

N

ミネバは、艦内の生活に反発する様子を見せ始めていたのである。(略)ハマーンにしてみれば、そのミネバの反動が欲望に変わって、地球圏を自分の物にしたいという欲望にまで高まれば理想的だと思っていた。

めたん

ミネバが軍艦暮らしにうんざりして、地球で暮らしたいと思うようになればいい……。怒りや不満が、自然と地球に住む人々に向かうようにしてるのね。

ずんだ

7歳くらいの女の子に、これはひどいぜ。

めたん

ハマーンなりに、ミネバに対して情があるという記述もある。でもミネバはハマーンの前でほとんど笑わない。ハマーンは誰であれ、自分の思い通りにコントロールしようとする。

めたん

ハマーンは、頭が良すぎるのよね。だから、利用し、支配する。それ以外の人間関係の作り方を知らない。

めたん

そして、それはジュドーに対してもそう。ジュドーとは劇中で5回くらい会ってるけど、拳銃を突きつけたり、MSで脅したり……、やはりいつも、コントロールしようとしてる。

N

「お前には、たしかにニュータイプの要素を感じるが、お前は流れに乗るということを知らさなさすぎる。直感だけに頼っていれば、いずれ破滅するぞ」

めたん

強めの言葉なら脅迫。今の言葉で言えばモラハラかしら。私の言う通りにしろ、さもないと……と言って、自分の意のままに相手を操ろうとする。

めたん

人が人を道具にして、意のままに操ろうとする。1stのキシリアやギレン、Zのシロッコもそうだけど、富野監督はこれを特に嫌うわ。

めたん

劇場版Zのセリフで、カミーユも言ってるね。

N

「人間を道具にして!それは人が人に、一番しちゃいけないことなんだ」

ずんだ

ハマーン様は、だいぶ若い頃から国のリーダーなんてやってたから、知らず知らず、人を使うことになれちゃったかもしれないのだ。

めたん

そうね。富野監督も、なまじカリスマがあったばかりに、崇められることに慣れすぎた……と指摘しているわ。

めたん

先ほどと同じ、『Zガンダムヒストリカ 9』より引用するわ。

N

ハマーンが不幸だったのは、カリスマになって周りに人をつけちゃったために、その連中の目線を忘れることができなくなってしまったということです。(シャアに逃げられた)可哀想さも含めて、なまじカリスマ性があったばっかりに、自分の周りに集団ができてしまったということなんです。

ずんだ

そうだよなあ。ずーっと周りから、カリスマとして見られてたんだよね。ハマーンって、もともと強かったんじゃなくて、強いハマーンでいるように、強いられていたかもしれないのだ。

めたん

そして2つ目の欠点。自分の欠損感を埋めるために、常に何かを利用している。

めたん

まず姉マレーネの復讐のために、ミネバを利用した。そしてシャアに捨てられると、軍隊を率いてエゥーゴを揺さぶった。シャアが姿を消すと、代わりにジュドーに語りかけた。

N

「ジュドー、私と来い!」

めたん

自分の心の欠損を埋めるために、他人を利用する。要求したり、命令したり……。実はハマーンが強く出るとき、背景には欠損があるわ。

めたん

冒頭で三日月の話をしたわね。三日月の明るい部分……ハマーンの強さや美しさが際立つときには、同時にその欠損部分の闇が見える。

ずんだ

ハマーン様のカッコよさは、弱さと表裏一体なのだ。

めたん

そして次が、ハマーン最後にして最大の欠点。それは、絶対に自分の気持ちを話せないこと。今までのセリフもぜんぶそうだったわ。

N

「これで終わりにするか、続けるか、シャア!」

「口のきき方に気をつけてもらおう!」

めたん

ファンネルを向けながら、一緒に来なければ殺すという。「シャア、私はお前に、そばにいてほしい」とは、絶対に言えない。

N

「ジュドー、私と来い!」

めたん

理屈や武器を突きつけながら、「私と来い」と命令する。「ジュドー、私はお前に、一緒にいてほしい」とは、絶対に言えない。

めたん

シャアやジュドーだけじゃないわ。ハマーンの言葉は、常に“You should”。お前はこうするべきだ、こうしろ、そうしないとどうなるか……。

ずんだ

ジュドーにはだいぶ心を開いてたようだけど……。それでも言葉遣いはいつも、脅迫とか命令ばっかりだったのだ。

めたん

お前はこうするべきだ、こうしろ、そうしないとどうなるか……。これは心理学でYouメッセージと言って、相手を縛り、支配するもの。恋人や同僚にこういう言葉遣いをしていると、信頼は築けない。

めたん

逆に大事なのはIメッセージと呼ばれるもの。私はあなたが好きだ、一緒にいてほしい、助けてほしい……。

めたん

「私は」という自分の気持ちを打ち明けるから、勇気がいるのね。でも言われた方は、気持ちが伝わり、心が動く。

めたん

最後のジュドーとの一騎打ち。とても潔いふうに見えるけど、あれも相手を支配しようとするハマーンの悪い癖が出ているわ。

めたん

ハマーンは自軍をじっとネェル・アーガマの進路上に待ち構える。不気味な気配に気づくビーチャたち。

N

「モウサが戻ってくれてる」

「コア3の陰に敵も隠れている」

「どうして攻撃してこないの?」

「こちらの出方を見てるか……」

めたん

なぜか動かない敵。しかしジュドーだけは見抜いている。

N

「俺を待ってるんだよ。ハマーンはこちらの動きに合わせて、じっと待ってくれているんだ」

めたん

そしてジュドーは、一騎打ちに出かけていく。部下からそのことを報告されたときの、ハマーンのリアクションに注目よ。

N

「案ずるな。すでにジュドーは私の意思のもとにある」

ずんだ

笑った。

めたん

この笑みは、いろんな意味があるでしょう。ジュドーと会えて嬉しい。2人きりで戦えるという喜び。この回のタイトルは、『戦士、再び』ですからね。

めたん

それにしても、「ジュドーは私の意思のもとにある」ってすごい言葉よ。やはり私の思い通り出てきたか。わかっていたよジュドー。そういうハマーン特有の傲慢さを感じるわ。

めたん

それは頭が回りすぎ、賢すぎるハマーンの欠点よ。相手を操ることに長けていて、自分の気持ちが話せない。富野監督もインタビューでこんなことを言ってるわ。

N

「ハマーンが可愛くないとすると、それは年をとるとわかるんですが、利口すぎたんですよね。自分のカリスマ性を振り回して、面白くなっちゃったのが、一番タチの悪いところで。だから本当にシャアが抱けば済むかというと、それほど可愛くはなくなってしまったんですよ」

(『Zガンダムヒストリカ 9』)

めたん

利口すぎ、強すぎたがために、弱い自分を出せない。だからIメッセージが出せない。「一緒にいて」と言えないの。

めたん

そのことは「ダブル」の物語であるZZの、ラストに再び問われることになる。

めたん

ハマーンはつぶやく。

N

「人は生きるかぎり独りだよ。人類そのものもそうだ」

めたん

その言葉を、ジュドーは切って捨てる。

N

「そんなに人を信じられないのか!憎しみは憎しみを呼ぶだけだって分かれ!」

めたん

さらにこう続けているね。

N

「自分の頭だけで考えるな!今持っている肉体にだけとらわれるから!」

めたん

そして一番最後には、ハマーンをまるで褒めるような、たしなめるような口調で、こう言っているわ。

N

「その潔さを、なんでもっと上手に使えなかったんだ!持てる能力を調和と協調に使えば、地球だって救えたのに!」

ずんだ

だいぶ最大級の賛辞なのだ。

めたん

ハマーンはすごいのよ。でもその能力をすべて、他人を利用し、支配することに使ってきた。だからジュドーは言う。人を信じろ。自分だけで考えるな。自分と人を重ね合わせ、協調しろ。

めたん

ちなみにジュドーのこの言葉は、何と前述の初期プロット……。「Zガンダム・パート2」のラストでも、すでにほぼ同じ内容が書かれているの。それはこう。

N

「同化しろ!自己の主義を通すだけでは、人間は、解放されない」

N

「ただ、あるだけの自己を表出し、それを他人に重ね合わせればいい!そして、人の意思を自分の意思に重ね合わせることができれば、人の和解がある。それができる能力を人は持っている」

ずんだ

TV版ラストのジュドーのセリフ、自分の頭だけで考えるな、強調しろっていうのと、だいぶ近いのだ。

めたん

さっき、この初稿、Zガンダム・パート2は、「アクシズからの使者」の頃に書かれたものと言ったでしょう。

ずんだ

はい。85年の、10月頃だよね。

めたん

ってことは、まだZの最終回の作業前よ。つまり富野監督は、あの破滅的なZのラストを作るかたわらで、もうすでに「強調しろ」と叫ぶジュドーが勝利するZZのラストを考えていたの。

めたん

同様に、Zでハマーンがカミーユを拒む展開……。ニュータイプ同士の決裂を描きながら、ZZではジュドーが新たなニュータイプの可能性を示すラストを描いていた。

ずんだ

悲劇のZを作りながら、ZZの希望のラストを同時に書いていたの?

めたん

そうよ。だから言ったでしょう。ZZは、Zの「ダブル」。

めたん

そしてジュドーはカミーユの、「ダブル」なのよ。

ずんだ

絶望と希望を、同時に書いてたのか。富野さん、すごい人なのだ。勲章とかあげたらどうだろう。

めたん

こないだもらってたわ。

ずんだ

おめでとうございます。

めたん

Zが暗かったのは、ただ富野さんが絶望してたからじゃないのね。そのダブルとして希望を語るZZを、同時に構想してた。ZだけでもZZだけでもいけない。2つで1つなの。

ずんだ

シャアが劇場版に出張しちゃって、だいぶ展開は変わったけど、根本のテーマはぜんぜん変わってなかったんだね。

めたん

話を元に戻しましょう。しかし、ハマーンは結局プロットの変更のせいで、孤独なまま終わった。

めたん

ZZになるとき、多くのキャラにダブル・分身が設定された。でもハマーンだけは、一人だった。

めたん

おかげで何の因縁もないグレミーと戦うことになり、本来シャアを討つはずだったジュドーに殺された。

めたん

本当なら、シャアに殺してもらうはずだった。あるいはシャアの、母になるはずだった。でも、筋書きが変わり、ハマーンはシャアに忘れられた。

N

捨てられた女より

もっと哀れなのは

よるべない女です。

よるべない女より

もっと哀れなのは

死んだ女です。

死んだ女より

もっと哀れなのは

忘れられた女です。

めたん

これがハマーンの欠損。そして実は……、強さや美しさよりも、ここ。この欠損こそが、ハマーンの魅力じゃないかしら?

めたん

ハマーン・カーンは、欠けている。でもその闇が放つ魅力が、人をとらえるんじゃないかしら?

ずんだ

そういえば。

めたん

はい。

ずんだ

何度か話題に出てた、ハマーンの最終目標って何なのだ?

めたん

ああ、えーとね。ここは、あんまり確信があっていうわけじゃないんだけど……。

ずんだ

うん。

めたん

27話でジュドーを味方に引き入れようとするとき、ハマーンはこんなことを言っているの。

N

「私はアステロイドベルトで、ぞっとするほど暗く冷たい宇宙を見つめながら、何年も生きてきた。その間に地球の愚かな人間たちは何をした?地球再建に奔走するあまり、地球の汚染を顧みず、あろうことか汚染を拡大させてきた。それを許すわけにはいかない」

めたん

あと小説第5巻、54ページではこうも言ってる。

N

「人類全体に人の生きる道を示して、無駄なく、正確に、人の変革の道を進むべき時代だと思わないか?」

めたん

まとめると、こう。

めたん

これ、誰かの言ってることに似てると思わない?

ずんだ

さすがに僕もピンと来たのだ。

めたん

だあれ?

ずんだ

シャアと、同じこと言ってるのだ。

めたん

ね。ザビ家は利用するだけ、方便とも言ってたし。実は本心では、シャアと同じこと考えてたのかも。

ずんだ

というか、シャアの、お手伝いがしたかったのかも。

めたん

「私と来い」って、ハマーンは、自分が言うんじゃなくて、シャアに言ってほしかったのよね。

めたん

あとね。ハマーンの最後のセリフの、「強い子」ってさ。

ずんだ

ジュドーのこと?

めたん

もちろん。そして未来を託せるニュータイプって意味でもある。

ずんだ

ニュータイプの時代を作りたいっていうハマーンの願い、実は最後に叶ってたんだな。

めたん

しかもね。最後のこのセリフだけハマーンは……。

めたん

「自分の気持ち」を、喋っているのよ。