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【ナフサショック直撃】なぜ給料は減らないのに生活が苦しいのか、値上げのリアル

投資の灯台32:35

Transcription

給料は1円も減っていない。残業もむしろ少し増やした。それなのに月末の財布は去年より明らかに軽い。

スーパーのレジでいつもと同じ顔ぶれの買い物のはずなのに、合計の数字だけが静かに伸びている。電気の請求書を開く手がわずかに重くなる。コンビニのおにぎりを1つ棚に戻す。その小さな動作を自分でも気づかないうちに繰り返している。君は今、そういう時期に立っているのではないか。

これは怠けの話ではない。老費の話でもない。働く量も暮らし方も何一つ変えていないのに、生活だけが理由の説明もないままじわじわと苦しくなっていく。多くの人がこの感覚にまだ名前をつけられずにいる。原因が見えないから対処のしようもなく、ただ漠然とした不安だけが胸の底に溜まっていく。

資源エネルギー庁によれば、国の電気とガスの料金支援は2026年1月使用分から3月使用分までで一区切りとなる。3月使用分、つまり4月に届く請求が値引きの最後だ。4月以降をどうするかは2026年4月の時点で示されていない。値引きの単価そのものも、1月の電気低圧1KWあたり4.5円から3月には1.5円へとすでに細っている。日本経済新聞の報道では、標準的な世帯で3ヶ月分の軽減はおよそ7000円。その薄い傘さえ今まさに静かに畳まれようとしている。

本チャンネルの東大は、歴史に名を刻んだ偉大な投資家たちの哲学を紐解く場だ。ただし、その解説には私個人の主観や解釈、偏りが多分に含まれている可能性がある。決して未来の利益を保証するものではない。投資に関する最終的な判断は、必ず君自身の責任において行ってほしい。

今夜はその名前のない苦しさの正体を解剖したい。なぜ君の財布は説明もなく軽くなるのか。なぜ君の口座の数字は減っていないのに暮らしだけが痩せていくのか?そしてなぜこの夏からそれが牙を向くのか?順番に1つずつ見ていく。

まず、君の生活のほぼ全ての入り口に立っている、ある液体の話から始めたい。名前をナフサという。多くの人はその名前すら聞いたことがないだろう。だが、知れば知るほどこれほど生活の根に絡みついた物質はないと気づくはずだ。

ナフサは原油から取り出される、ガソリンによく似た透明な液体だ。タンカーで運ばれた原油を精製で熱すると、沸点の違いによって軽い順に成分が分かれて出てくる。LPガス、ガソリン、その次にナフサ、さらに灯油、軽油と続く。ナフサはちょうどガソリンの一歩手前にいる。だから、ガソリンを多く作ろうとすれば、その分ナフサは減る。両者は同じ原油の中身を奪い合う関係にある。ガソリンも生活の必需品だから減らすわけにはいかない。かといって、ナフサのためだけに原油を余分に輸入すれば、今度は軽油や重油が国内で余ってしまう。この綱渡りのような均衡の上に全てが乗っている。

そして、このナフサは燃料ではない。燃やすためではなく、作るために使われる。ナフサを800℃を超える熱で分解すると、エチレンやプロピレンといった基礎的な物質が生まれる。それを長く鎖のように繋げればポリエチレンやポリプロピレンになり、さらに加工すれば塩化ビニル樹脂、合成ゴム、合成繊維、ペットボトルの素材になる。一滴のナフサが、何もの工程を経て少しずつ形を変えていく。

ここから先は、君のよく知る世界だ。レジ袋も、食品トレーも、ラップも、ペットボトルも、シャンプーの容器も、紙おむつも、自動車のバンパーも、タイヤも、靴底も、塗料も、接着剤も、洗剤も、農薬も、化粧品も、住宅の断熱材や塩化ビニル管も。辿どっていけば、そのほとんどが一滴のナフサに行きつく。今、君の手の届く範囲を見回してみてほしい。石油から完全に離れているものを探す方が、むしろ難しい。私たちはナフサという見えない土台の上で毎日を暮らしている。

問題は、この巨大な土台が思っているよりもずっと細い柱の上に立っていることだ。日本で使われる基礎的な化学品の9割以上はナフサを原料にしている。同じものをアメリカは天然ガスから安く作る。アメリカには原料の蛇口が複数ある。だが、日本にはその別の蛇口がほとんどない。そして、その輸入ナフサのおよそ7割を超える量が中東産だ。資源エネルギー庁によれば、原油そのものも日本はおよそ95%を中東に頼っている。つまり、国内で精製するナフサも、元をたどれば中東の原油から生まれている。輸入も国産も根は同じ一本に結ばれている。逃げ道の細い一本道に近い。

経済産業省が中東情勢への対応としてまとめた資料でも、この依存の構造は繰り返し指摘されている。日本の化学産業は、中東という一本の細い水路の上に暮らしの土台の多くを乗せている。しかも、原油には国家の備蓄がある。という時に取り崩せる蓄えが国として用意されている。ところが、ナフサにはそれがない。あるのは民間企業の在庫だけで、その厚みは数十日分程度にとどまるとされる。蓄えの薄い柱は、衝撃が来た時耐える時間すらほとんど持たない。

その細い水路が今、詰まりかけている。そのつまりは、いつどうやって君の財布に届くのか。ここが今夜の話の本当の核心だ。

中東のホルムズ海峡が事実上止まったのは2026年の春先だ。日本が原油の9割、輸入ナフサの7割以上を通す、この世界物流の大動脈で船が動けなくなった。複数の報道によれば、2026年5月初めの時点でも1600席を超える船と2万人を超える乗り組み員がペルシャ湾の内側で足止めされていた。原油の先物価格は紛争の前は1バレル60ドル台だったものが、2026年4月7日には112ドルを超えている。

ここで一つ、冷静に見ておきたいことがある。航路の交渉が進むことと、海峡の物流が元に戻ることは、別の時間軸で動く。机で握手が交わされても、止まった船と上がってしまったコストがその日のうちに元へ戻るわけではない。この二つを混同するものから判断を誤っていく。その衝撃はまず、素材の値段に出た。

化学業界の専門紙である化学工業日報や日本経済新聞の報道によれば、国産ナフサの基準価格は2026年1月から3月の期間で1トンあたり6万5700円。スポットの価格に至っては、2月末に1トン600ドルに届かなかったものが、3月末には1200ドルを超えた。わずか1ヶ月ほどでほぼ倍だ。その後も1000ドル前後で高止まりしている。4月から6月の基準価格は、過去最高を大きく更新する見通しだという。

化学メーカーは、2割から3割を超える値上げを、努力だけでは吸収できないとして相次いで発表した。これは特定の一社の事情ではない。産業の土台そのものが底上げされている。政府は記者会見などで、当面必要となる量は確保できていると説明している。報道では、6月中旬あたりまでの調達には目処が立ったとも伝えられている。だが、量が足りても値段は戻らない。すでにほぼ倍だ。そして、その先の保証はどこにもない。

パニックになる必要はない。買い占めに走るのも賢い行動ではない。だが、ある程度の値上げと暮らしの混乱がしばらく続くことは、静かに覚悟しておいた方がいい。慌てないものだけが正しく備えられる。恐怖で動くものほど、一番高い値段をつけられやすい。

だが、ここで君に本当に理解してほしいのは、値段の数字そのものではない。それが君の手元に届くまでの時間差だ。素材が上がっても、それが君の買い物カゴの中の商品に届くまでには長い遅れがある。最初に上がるのは、化学メーカーから加工業者へ渡す原料の出荷価格だ。これはもう春に起きた。次に、加工業者から氷へ渡る卸しの価格が上がる。これが初夏から夏にかけてだ。食品トレー、ペットボトル飲料、シャンプーの容器、紙おむつ、そして住宅の断熱剤や塩化ビニル管。さらにその先、数ヶ月から1年をかけて、医薬品、合成繊維、タイヤ、自動車部品、家電にまで波が届く。

遅れの長さは、その商品の在庫の厚みと、作ってから売れるまでの時間で決まる。回転の早いものほど早く、遅いものほど後から静かに聞いてくる。つまり、君がまだ大きな値上げを実感していないのは、波が来ていないからではない。波がまだ陸に届いていないだけだ。沖ではもう、高い波が音もなく立ち上がっている。そして一度上がった値段は、原因が消えてもそう簡単には下がらない。

各企業は今回の経験から、中東に頼りきる体制を見直し始めている。供給の形そのものが変わり、コストの土台が一段底上げされていく。危機が去っても価格が元の場所には戻りきらないということが起こりやすい。これが今回のインフレがこれまでと質的に違う理由だ。一時的な高熱ではなく、平熱そのものが上がる。

そしてこの夏、君を待っているのは一つの波ではない。逃げ場のない出費が同時に四つの方向から押し寄せる。一つ目は、光熱費だ。補助金の薄い傘が畳まれる。まさにその時に、容赦ない猛暑が重なる。電気は命に直結する支出だ。値段が上がったからといって、真夏に高齢の親の部屋のエアコンを止める者はいない。値段がいくら上がっても、買う量を減らせない。経済の言葉で言えば、需要が価格にほとんど反応しない。逃げられない支出ほど、人は最も削れない。

二つ目は、食品だ。包装フィルム、トレー、容器、輸送に使う燃料。その多くがナフサと石油につながっている。素材の高騰は遅れて店頭の値段札に乗ってくる。価格転嫁の遅れは、君に請求が届かないという約束ではない。遅れて届く、避けられない請求書だ。届くのが遅いだけで、君はそれが来ないと錯覚しているに過ぎない。

三つ目は、住まいだ。断熱材、塩化ビニル管、塗料、接着剤。家を建てる材料が上がれば、新築や修繕の費用が上がり、それは時間をかけて賃貸の家賃にも波及していく。価格には「価格硬直性」という性質がある。一度上がった値は、原因が消えてもそう簡単には下がらない。しかも、住まいは簡単には乗り換えられない。引っ越しには大きな費用と労力がかかる。逃げにくい支出ほど、上がった値を黙って受け入れるしかなくなる。

四つ目は、円安だ。2026年5月の時点で、1ドルはおよそ158円。輸入に頼る国にとって、円が安いということは、同じものをこれまでよりも高い値段で買い続けることを意味する。ここで一つ、嘘のない話をしておきたい。円安の理由を日米の金利差だけで説明する声をよく聞く。だが、今はその金利差だけでもなお円安が進んでいる。これは単純な一本の式では読めない局面に入っている。専門家でさえ来年のレートは当てられない。当てられないものを当てに行っていけない。そして円安は、他の三つと並ぶ一項目というより、光熱も食も住まいも、全てをそこから押し上げる、通底する流れだ。

四つの波に共通するのは、どれも避けられない基本的な支出であるということだ。趣味でも贅沢でもない。生きるために毎月黙って払い続けている費用。その全部が、同じ季節に同時に重くなる。想像してほしい。真夏のある一日のことだ。エアコンを切れずに電気代が膨らんでいく。スーパーへ行けば、食材の値段が静かに上がっている。家に帰れば、賃貸の更新通知が届いている。そのどれもが、君の意志とは無関係に、同じ夏に同時に重なってくる。

ここまで外の海で起きていることを見てきた。だが、本当の問題はここからだ。これほどの圧力が沖で積み上がっているのに、町はいつもと同じ顔をして動いている。スーパーには人が並び、誰も大声で騒いではいない。なぜこれほどのことが起きているのに、ほとんどの人がまだ動かないのか。

ここで視点を君自身の内側へ移したい。なぜこれほどの圧力が、未だ多くの人に痛みとして、はっきり自覚されないのか。君が悪いのではなく、君の脳の癖にある。行動経済学では、人は同じ大きさの損と得を対象には感じないことが知られている。何かを失う痛みは、同じだけ得る喜びよりも二倍以上重く感じられる。だから、人は給料が月に数千円下がれば、劣化のごとく騒ぐ。職場で手取りが3000円減ったという話が出れば、その日の昼休みはその話で持ち切りになる。明確に見える、はっきりした損だからだ。

ところが、同じ3000円分の購買力が物価の上昇によって静かに失われても、誰もその話をしない。ニュースにもならず、昼休みの話題にもならない。なぜなら、口座の数字そのものは1円も減っていないからだ。これが名前のない苦しさの正体だ。君の残高は減っていない。だから、損をしているという自覚が生まれない。だが、その同じ100万円で買えるものの量は着実に減っている。名目は動かず、実質だけが痩せていく。これは誰も法案を通していないのに、毎月休みなく徴収されている見えない税金のようなものだ。

痛みの信号がならないから、君は防御の姿勢すら取れない。名目という数字は、君を安心させる麻酔のように働く。痛くないから、傷が深くなるまで気づけない。しかも今は、銀行に預けても利息は物価の上昇に追いつかない。差し引きで考えれば、実質的な金利はマイナスの側にある。安全だと信じて握りしめている現金は、そこに小さな穴の開いたバケツによく似ている。水を注ぎ続けている限りは水は保たれ、減っていないように見える。だが、注ぐ手を止めた瞬間、初めてそこからどれだけ漏れ続けていたかに気づく。

ここに、もう一つの落とし穴がある。かつて日本が長くデフレの中にいた時代、現金を握っていることは合理的な行動だった。物価が下がるのなら、何もしないものが静かに得をした。その成功体験が多くの人の中にまだ深く刻まれている。だが、土台が変わった。物価が上がる側へ構造が傾いた。同じ行動が、もう同じ結果を生み出さない。昨日まで正解だったやり方が、今日からは静かに資産を削る側に回る。経済は常に形を変えていく。過去の正解にしがみつくことそのものが、形が変わった海では最も大きなリスクになりやすい。学ぶことをやめたものほど、古い地図を握りしめたまま傷つきやすい。

熱湯に放り込まれれば、人は驚いて飛び出す。だが、ぬるま湯なら出ない。そしてその湯の温度は、毎年ほんのわずかずつ上がっている。気づいた時には、もう動く力が残っていない。これが現金だけを抱えて安心しているものに、静かに起きていることだ。

では、どうするか?ここから先は設計の話をしたい。逃げられない出費ただ払い続ける側にとどまるのか。それとも、値段を上げられる側へ立ち位置をずらすのか。発想を「消費するだけの側」から「資本を持つ側」へ移す。具体的には、君が持っている二つの資本をインフレに削られにくい形へ組み換えていくという考え方だ。

一つは金融資本。お金そのものだ。現金のまま握り続けていれば、見えない税金に毎年削られていく。一方で、歴史を長く遡れば、企業の株式という資産は物価の上昇をくぐり抜けて価値を保ってきた傾向がある。理由は単純だ。物価が上がる時、その値段を上げているのは企業の側だからだ。値上げを受け取るだけの側ではなく、値上げをする側を持つ。ただし、特定の一社にかけてはいけない。一つの企業は値上げに失敗することも、時代に取り残されることもある。だから、価格を転嫁できる企業の集まりを広く薄く分散して持つ。集団で持てば、個の失敗は平均の中に溶ける。S&P500やオルカンと呼ばれる全世界株式のインデックスは、その思想の最も素朴で最も単純な形だ。

ここで嘘をつくわけにはいかない。株はインフレを打ち消す万能の盾ではない。とりわけ今回のような供給の制約から来るインフレでは、企業の側もまた、原材料高に利益を削られる。物価高と業績の悪化が重なれば、株価そのものが大きく下げる局面もある。短い時間の中では、株がインフレを必ず相殺してくれるわけではない。これは長い時間軸で見た時に価値を保ってきた傾向があるという話に過ぎない。未来を約束するものではない。

だからこそ、順序を間違えてはいけない。まず無駄な固定費を削り、半年から1年分の生活防衛資金を現金で確保する。値動きする資産に手を伸ばすのは、その土台ができてからだ。土台のない塔は、最初の一人の風で倒れる。なぜ土台が先なのか。値動きする資産を持てば、いつか大きく下がる局面が来る。この時、売らずに耐えられるものと、底値で手放してしまうものを分けるのは、精神の強さではない。半年分の蓄えが手元にあるという、ただの事実だ。土台は君の資産だけでなく、君の判断そのものを守る。順序を守らずに先を急いだものほど、最初の嵐で最も悪い場所で船を捨てる。

もう一つは人的資本。君自身の稼ぐ力だ。これを、見落とすものが、あまりにも多い。一つの会社、一つの業界だけに収入の全てを預けている状態は、よく見ればあのナフサの水路と全く同じ構造をしている。細い一本に全てを乗せている。世界の情勢が一度あれれば、その一本はあっけなく止まる。だから、収入の入り口を複数にしておく。

誤解しないでほしい。これは一発を狙う攻めの副業の話ではない。今ある技能に、別の技能を一つ合わせる。時間の一部を別の流れへ静かに振り向けておく。水路をもう一本掘っておくという、守りの設計の話だ。攻めるためではなく、本流が止まっても暮らしが止まらないように、流れを分けておく。

ここで、ある思想家の言葉を思い出す。ナシム・タレブは著書『反脆弱性』の中で、世界のものを三つに分けた。衝撃を受けて壊れる「脆ろいもの」。衝撃を受けても変わらない「頑ななもの」。そして、衝撃を受けて逆に強くなる「反脆弱なもの」。彼が繰り返し語っているのは、「未来を正確に予測しようとするな。衝撃を受けてむしろ強くなる側に、自分を置け」という趣旨だ。来年のレートも、ナフサの値段も、中東がいつ静かになるかも、誰にも当てられない。当てに行った瞬間、君は投資家ではなく占い師になる。

だからこそ、当てに行くのではなく、何が起きても折れない形に、自分の二つの資本をあらかじめ組み換えておく。予測ではなく設計だ。守るべきは相場ではない。嵐の中でも沈まない、君自身の船だ。

最後に、少し離れた場所からこの夏という季節を見ておきたい。物価が上がるという現象は、社会を静かに二つに分ける。値上げをただ黙って払い続ける側に立つのか。値上げを、自分の持つ資産の値上がりとして受け取る側に立つのか。同じ夏を、全く違う温度で過ごす二つの集団が生まれる。資本を持つものの取り分は、働いているものの取り分よりも早く伸びやすい。この傾きは、今年始まったものではない。ずっと前から静かに続いてきた。だが、インフレはその傾きを急にする。なだらかだった坂を、より急な坂に変えてしまう。これは脅しではない。データと構造がそういう傾向を示しているというだけのことだ。

私は君を不安に突き落としたいのではない。同じ嵐の中に立っている一人として、君の隣に地図を一枚そっと置いておきたいだけだ。怖がらせるための話ではなく、君が自分の足で立ち位置を選べるようにという話だ。君がどうするかは、君自身が決めることだ。だが、私は見えない税金に無抵抗で削られ続ける側には回らない。現金の一部を、価格を上げられる側へ。収入の入り口を一本から複数へ。少なくとも私はそう考えている。

慌てるな、怯えるな。だが、黙って削られるな。夏はもう沖まで来ている。波が陸に届く前に、君がどこに立つのかを決める時間は、まだわずかに残されている。

給料は減っていないのに陥った落とし穴。それはナフサという見えない土台への中東依存という構造的な脆弱性から始まった。ホルムズ海峡が止まり、素材価格が倍になっても、その波は時間差を持って私たちの暮らしに届く。この夏、光熱費、食品、住まい、円安という四つの逃げられない出費が同時に重なる。最悪なのは、口座の数字が減っていないために、私たちの脳は危険を感知しないことだ。これは脅しではなく、データと構造が示している傾向だ。

対策は予測ではなく設計。第一に、生活防衛資金を確保した上で、金融資本を現金から価格転嫁できる企業への分散投資へ。第二に、人的資本を一つの職から複数の流れへ。ナフサの水路が一本だったから詰まったように、収入も複数に分けておく。

慌てるな、怯えるな。だが、黙って削られるな。波が陸に届く前に、君がどこに立つのかを決める時間は、まだわずかに残されている。